嚥下障害による食事の変化

父の以前の生活から大きく変わったのが、食事です。
退院してきた時は食欲がなく、食べたい物も思いつかない、といった状態でした。
体重も入院前から10kg以上やせてしまいました。

脳梗塞の影響で嚥下に必要な筋肉がうまく動かせなくなったことと、長い入院であまり会話できず声も出さずにいたことで咽周りの筋肉が衰え、食べ物を飲み込む力が落ちました。

飲み込むのが難しいので食事に時間がかかり、嚙んだり、飲み込んだりすることに疲れてしまいます。
思い通りに動かせないのか、口の中を噛んでしまうこともありました。

嚥下障害で特に困ったのは、飲み物です。
サラサラした水分はすぐに咽に流れ込んでしまうので、自分のタイミングで飲み込むことができません。
飲むとむせてしまいます。
果汁の多い果物もジュワッと水分が出てくるのでむせます。
飲み込みがうまくできないと、食べ物が気管に入り、気管から痰がたくさん分泌されます。
痰は気管に入る異物を出すために分泌されます。
飲み物でむせる、痰がたくさん出てくることは、嚥下力が落ちているサインです。
父の場合、常に痰が出ていて、食べる度にむせる状態でした。

飲み込むことが難しい時は、食べ物にトロミをつけると飲み込みやすくなります。
言語聴覚士さんにより、飲み込む様子を確認しながら、安全に飲み込めるトロミの濃さや、食べられるものを探す事が続きました。
とにかく食べられるものを食べて、体力をつけることに専念することになりました。

まず、濃いめのトロミが必要と判断されました。
当初は、お茶にとろみをつけて出していましたが、父はほとんど飲んでくれません。
とろみ付きのお茶はまずいのだそうです。
実際にそれを飲んでみると、美味しくありません。
(家族や患者さん、利用者さんにして貰うことは、自分も体験してみると良いです。)

例え飲み込みが安全だとしても、飲まなくなれば、脱水の心配があります。
お茶はあきらめて、水分補給ゼリーや栄養補給ゼリーに切り替えると飲んでくれるようになりました。

さらに食事は、柔らかいとか、細かく切れば良いというわけでもありません。
粒状のカスが咽のポケット(梨状陥凹や喉頭蓋谷)に残れば(咽頭残留)、誤嚥性肺炎の原因になることもあります。
最後に水分で流すことも有効のようですが1)、父はよくむせていたので、ペースト状の食事が勧められました。
でもペースト状のおかずは、あまり食が進まないようでした。
(見た目もあまりよろしくありません…)

代わりに、高栄養のゼリーや豆腐などの介護食なら食べやすいようで、自分から食べてくれるようになりました。
高カロリーで溶けやすいチョコレートも食べやすいようでよく食べてくれました。
好んで食べるものは、不思議と むせにくいこともあるようです。

介護食品を取り扱うサイトには、嚥下力の程度に合わせた、飲み込みやすく、栄養価の高い食品が沢山あります。
ネットで注文するとすぐに届いて、忙しい時も大変助かりました。

先ほどの「トロミ剤」も多種多様で、進化もしています。
家庭にある片栗粉やデンプン系のトロミ剤だと、唾液で消化されて食べるうちにサラサラになってしまいます。
最近主流のキサンタンガム系のトロミ剤なら、粘度が維持され、味や安定性も改善されています。2)
介護用に作られ工夫された食品が沢山あることに驚きました。

そんな飲み込みやすい高栄養の食事のおかげで、父も少し体重が増え、意欲も出てきました。
すると次に課題となったのは、口腔内環境です。

噛まずに飲めるものばかりだと唾液の分泌が悪くなります。
唾液は、口内の抗菌作用、食べ物を飲み込みやすくする作用があります。
また、唾液は食べ物と混ざる事で、舌の味蕾に味覚を伝える役割も担っています。
唾液が出にくくなっているのか、父の味覚も以前とは変わっているようです。

唾液が出やすくなるよう、最近はカスが残りにくいスナック菓子で噛む練習をしています。
咀嚼や嚥下に必要な筋肉は使うことで復活していきます。 
口から食べることを諦めずにリハビリを続けることが大切です。

ただ、咀嚼や嚥下が難しい時は、食事に時間もかかり、顎や頬、咽や首の筋肉に負担がかかって、こわばりが出ています。
鍼灸で顔周りの筋肉をほぐすことで、動きやすくなり、また唾液の分泌も促されます。
唾液分泌に関する鍼灸の研究もいくつかあります。
多くが経穴への治療ですが、唾液腺のある顔面部への局所刺激が、他の部位よりも有効であったことも報告されています。
反応点治療でも、頭部、特に咀嚼筋(側頭筋や咬筋)、唾液腺付近の反応点に、アプローチしていきます。

父は、言語聴覚士さんによるリハビリ、私たちによる鍼灸など、いくつかの介入により、嚥下状態や発声状態も改善してきているようです。

だんだんに父の状態がわかってきて、生活のリズムが整ってきています。
生きていくために必要不可欠で、生きがいにもなる「食べること」。

引き続き、見守っていきたいと思います。

(副・院)

 

1)咽頭残留とフィニッシュ嚥下

2)とろみ調整食品

3)シェーグレン症候群(SjS)患者の乾燥症状に対する鍼治療効果

レスパイト

父の退院から1ヶ月が経ちます。
自宅での生活にも慣れてきて、必要なモノやことが分かってきました。
退院直後は、次々と起こる事態に対応しないといけないので、目の前のことでいっぱいでした。
それが、少し時間が経って落ち着いてくると、その大変さや先の不安も感じるようになります。
これまでの経験だと、災害後や出産後、何か初めての大きな出来事後の心情の変化にも似ているかもしれません。

そんな時に大切にしたいのが「レスパイト」。
訪問介護の仕事を始めた頃に教えてもらいました。
そして、その必要性も。

「レスパイト」(Respite)とは、英語で「小休止」「休息」「息抜き」といった意味の言葉です。
「レスパイトケア」という言葉もあり、

 介護する人に提供される計画的、もしくは緊急の、一時的なケアである。
 言い換えれば、「ケアする人のケア」である。1)

とあります。

介護の場合、その手段として、介護サービスの利用があります。
デイサービス(通所介護)2)や、ショートステイ(短期入所生活介護)3)は、利用者(介護を受ける人)の支援やリハビリにもなりますが、介護者(介護をする人)の負担を軽減する目的もあります。

また、鍼灸院に通うことが「レスパイト」になっている方もおられます。
介護の疲れを取りに来られたり、介護を受ける人も来られたり、一緒に来られたり。
在宅介護で一人で通うことが難しい人には、私たちが自宅に伺って一緒に治療させて貰ったりもしています。
介護の大変さを知って、ますますその重要性も感じます。

介護をする人の健康をまもるQ&A
介護する人の健康をまもるQ&A
(こんな書籍もあります)

他に、私にとっては、仕事をしている時間もレスパイトになっています。
仕事が忙しいことで、気が紛れることもあります。
介護のことから少し離れられると良いのでしょう。
同じ屋根の下でずっと介護を続けられる人は本当に大変だと思います。

ストレスも、ずっと続くと大変ですが、少し途切れるだけで、助かることもあります。
また、少し離れて客観的に見ることで、見えてくることもあります。
「育児」でも同じようなことが言えるかもしれません。

 

最近、介護が大変だという内容の投稿になっていますが、介護ができて良いこと、嬉しいこともあります。

もう少し余裕が出来たら、そんな内容の記事を書きたいと思います。

(院)

1) レスパイトケア

2) デイサービス

3) ショートステイ

介護サービスを受けるには

父が退院してあっという間の1週間でした。
その割にはいつもよりブログが書けています。
見守りや待機で時間ができたのと、家族についてだからですね。
患者さんや利用者さんのことは守秘義務があり詳しく書けませんが、家族のことなら具体的にも書けます。

この1週間、ケアマネジャー、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、介護士、鍼灸師(私達)の誰かしらが毎日入ってくださっています。
特に、退院後の2週間は、基本的な制限に縛られず「医療保険」による訪問看護が利用できます。
「特別訪問看護指示書」といって、主治医が頻繁な回数の訪問看護が必要と認めると交付されます。
(理学療法なども含まれます1)。)

では、「介護保険」を利用した、介護サービスについてはどうでしょう?
今すぐ介護を受けたい!と言って、すぐに利用できるわけではありません。
公的な介護サービスを受けるには、申請手続きが必要です。
(自費ならすぐ利用できるサービスもあります。)

その流れは、こちらをご参考ください。

芦屋市サイト
>介護保険
手続き方法(サービス利用までの流れ)
https://www.city.ashiya.lg.jp/kaigo/tetsuzuki.html

私の父は、入院前は独居で自活できていて、介護サービスも利用していませんでした。
でも退院後は介護が必要だろうと判断し、入院中に認定調査の申請を行いました。
病院で、認定(訪問)調査が行われ、一次判定(コンピューター)、二次判定(介護認定審査会)を経て、認定結果が通知されます。
その結果で、要支援1~2・要介護1~5のいずれかの判定がおりれば、介護保険でのサービスを利用することができます。
申請から通知まで、約30日程度かかりますし、かかりました。

在宅サービスの場合は、認定結果が出る前から生活が始まることもあるので、通知前に暫定的にサービスを利用することもできます。

その結果を待っている間に、施設を探したり、在宅であれば住環境を整えたりもします。
ポータブルトイレのように購入しなければいけないものや、歩行器、手すりなど、レンタルできるものもあります。
ケアマネージャーや福祉用具に詳しい方と相談されると良いでしょう。

病院での父の状態が詳しく分からなかったので、いくつか選択肢を用意しながら、実際の生活をしながら、器具や設備も取捨選択していくことになりました。
ここでも、やはり臨機応変に、その場に応じて対応していくことになります。

認定調査の申請をして、結果が出るまでには、時間もかかります。
その間に、家族や本人の希望を、すり合わせていきました。

徐々に介護が必要となれば、徐々に準備をすれば良いでしょう。
けど、病気などの入院をきっかけに介護が必要となれば、これまでの生活から大きく変わることもあります。
高齢になると、入院をきっかけに、急にできないことが増えることもあります。
介護が必要と感じたら、早めに申請するのが良いでしょう。

あと、はじめのチームに鍼灸師を含みましたが、一般的には、鍼灸師は入っていません。
鍼灸治療は、「介護保険」内では利用できません。
医師の診断があれば一部「医療保険」を利用することはできます。
但し対象疾患が限られているので、全身治療でもしようと思うと、自費になります。

鍼灸が医療として認められていない現状もあります。
実際、私自身もどんな鍼灸師にでもお願いしたいとは思いません。
鍼灸治療が医療として認められるには、鍼灸師の質を上げていくことは大きな課題としてあります。

(院)

1)全国訪問看護事業協会
「訪問看護事業所における看護職員と理学療法士等のより良い連携のための手引き」
https://www.zenhokan.or.jp/new/new1564/

施設か在宅か

いざ「介護」が必要になったときの選択肢として、大きく分けて二つあります。
施設」(特養、老健、グループホームなど)で見てもらうか、「自宅」で訪問介護(ヘルパー)に来て貰うか。
どちらが良いかは、介護を受ける人と、家族や周りの環境によります。

私の父の場合は、入院直後から「せん妄」症状が出ました。
高齢で環境の変化が大きいと、よくあることだそうです。
入院時に、病院からその説明冊子まで頂きました。

せん妄とは、
「時間や場所が急にわからなくなる見当識障害から始まる場合が多く、注意力や思考力が低下して様々な症状を引き起こします。」1)

治療と対策としては、
「せん妄が起きている原因に対しての処置・治療を行い、患者が落ちつき、安心できる環境 を整えます。ほとんどの症例で入院治療を行います。」1)

せん妄は、中枢症状であり、なぜそうなるかは神経伝達物質のアンバランス、神経障害等が考えられています。2)
その準備因子(個人の脆弱性)や誘発因子(外的要因)として、高齢、脳血管障害、感染症、脱水(電解質異常により脳神経細胞の低下)、緊急入院(環境の変化)、アルコール依存、せん妄の既往などがあります。
ちなみに、この上げた因子の全てが今回の父に当たり、成るべくしてなったとも言えます。

コロナ禍の入院では、家族の面会が一切できず、環境調整にも限界がありました。
面会できないということは、その間の家族の負担は減るものの、入院中のサポートは病院次第でもあります。
病院選びも慎重にです。
医療資源がひっ迫していると、それも難しい課題です。

「せん妄」に対して鍼灸に何が出来るか考えますが、入院中に起こることなので、鍼灸が介入できることはまれです。
文献を探しても、多くは中国(病院内で鍼灸も一般的)のものです。

このような「せん妄」状態では、急性期が過ぎてもリハビリは進まず、入院していることが 害 にもなってきます。
すると、次なる選択肢は、介護施設に移るか、自宅に戻るかです。

介護施設では、病院よりは環境調整が可能になります。
施設にもよりますが、普段の生活に近い状況で、細かなケアを受けられることもあります。
しかし、入院前からの環境の変化を考えれば、病院と同じ結果も考えられます。
コロナ禍では、病院同様、家族の面会に制限があるところも少なくありません。
そもそも、すぐに入れる良い施設が見つかるか、見つけられるか問題もあります。

そうなると、住み慣れた自宅に帰って過ごすことが、選択肢に上がります。
入院前からの環境変化が防げ、そして何より自由です。
ですが、状態によっては、家族の協力や医療・介護サービスの利用が必要になってきます。

そして、私の父は、自宅に戻りたいという本人の希望と、家族のサポートも可能ということで、在宅での介護 を選びました。
鍼灸治療も自由に受けられます。

介護が必要となってみないと分からないこともありますが、どうありたいか、本人と家族の希望や同意、予め考えておいた方が良いのでしょう。

でも実際は、必要に迫られて、その時の状況で、選択していくことになるのでしょう。
そんな時に相談できる「介護に詳しい人」を見つけておくことが、大事なのかもしれません。

(院)

 

1) せん妄.
公益財団法人長寿科学振興財団
健康長寿ネット

2) 高齢者のせん妄の機序.
日本老齢医学会雑誌. 2014.

親の介護が始まりました

今週、昨年4月から始まった学校での授業が終わりました。
学生さんのテスト結果も良くてホッとしています。
次年度以降は今年度のくり返しで、少し余裕ができるかなと思っていたら…
父の介護の始まりです。

今回の脳梗塞と約1か月半の入院生活は、厳しいものでした。
入院前のように一人での生活は難しく、介護サービスを利用しての生活が始まりました。

病気や介護は予防が大切です。
そうならないようにケアするのが大事なのですが、自分の親に至っては不十分でした。
身近な家族のケアや介護の難しさも感じます。
過ぎた過去の生活習慣も変えられません。

それよりも、これから何が出来るか。
介護が始まると、これまでの生活も一変します。
記事を書いている時間も惜しいです。
落ち着いてからまとめるのも考えたのですが、その最中に思うことは多いです。
それと隠しがちな介護のことを、周りの人に知ってもらうことも大事かなと思います。

学生にも、インプットだけでなく、アウトプット=人に伝えることが大切だと度々 伝えています。
(私が苦手なのもありますが…)
間違いや失敗もあるかもしれませんが、それも学びです。
鍼灸師と少し介護士の目線で、親の介護を通して感じたことや出来ることを、書き残していきたいと思います。
それが、同じく今、介護をしている方や、いつか介護が始まる方のお役に立てば幸いです。

介護は大変です。
嫌なことに目を向ければいくらでも見えてきますが、その中でも良いことを見つけていきたいと思います。
そして気負わず、たまに気も抜きながら、ぼちぼち更新していきます。
 
(院)

疲労にも鍼灸

疲れていますか?

コロナ禍、風邪は引かなくなったけど、「なんか疲れたな~」、「しんどいな~」という方は増えているように感じます。
今週、そんな鍼灸院でもよく出会う「疲労」をテーマに、授業をしました。
「今、疲れている人?」と質問すると、8割近くの学生が手を挙げました。

ですが、世界的にはそうでもないようで、アメリカで同じ質問をしても「はい」と答えるのは、1割未満だそうです1)
アメリカでは疲れたら休むのが常識のようで、「疲労」については、研究対象になりにくいようです。

 

疲労の概念に変化

ところが、日本では深刻で、「KAROSHI」がそのまま単語になるくらい、大問題です。
そこで、日本の疲労研究が世界をリードしはじめます。
疲労の原因物質が特定されたり、これまで主観的だった疲労を客観的に示せるようになり、従来の疲労の概念も変化してきています。

その一つ、かつては乳酸が疲労の原因とも言われていましたが、現在、それは否定されています2)
運動強度の指標にはなりますが、疲労物質にはなりません
むしろ、エネルギーの再利用、疲労回復にも役立っていることが分かっています。
疲労の原因、引き金となるのは「活性酸素」とされています3)

また、「疲労回復」を謳っていた栄養ドリンクの効能も、「疲労感の軽減」と表記されたりしています。
つまり、疲労感を軽くさせても、疲労は回復していなかったということです。
むしろ、疲労感なき疲労が、過労死やうつ病を導くとも言われています。
ストレスによって、疲労感が抑えられることもあります2)
ストレスを受けたときに分泌されるコルチゾールやアドレナリンによって、疲労感の原因となる炎症性サイトカインを抑制し、疲労を感じなくさせるようです。
ランナーズ ハイはその分かりやすい例ですね。

 

疲労の予防と回復

では、その疲労を根本的に予防や回復するためにはどうすれば良いでしょうか?
やはり「休む」ことです。
そんなことは当たり前なので、効果的な休息を考えます。

よく聞く神経疲労も、同じ神経回路ばかりを使っていると、シナプス間の神経伝達物質の枯渇が起こり、閾値が上がります。
閾値が上がれば、反応も鈍くなり、パフォーマンスも低下します。
それを防ぐには、その神経回路を使わない、つまりは休むことに他ならないのです。
特に細胞体の小さい脳神経は、顕著です。
神経の性質から考えても、広くまんべんなく使う「飽きた」と思う前に休むことが、効果的なのです。
(疲労の兆候として、飽きる、眠くなる、パフォーマンスの低下が挙げられています。)
120分作業して30分の休息を取るのにも、40分作業して10分休むのを3回繰り返した方が、作業効率は良くなります。

また、前述した近年の日本での疲労研究の進展により、疲労因子FF(Fatigue Factor)と疲労回復因子FR(Fatigue Recover factor)が発見されています。
疲労度を客観的に表すことも可能になっています。
それが、ヒトヘルペスウイルスのHHV-6、HHV-7です。
疲れた時に口の周りに出たりする、あの原因ウイルスです。
唾液に出てきたヒトヘルペスウイルスの量を調べることによって、疲労の程度が見える化されます。
そんな疲労研究の進展により、効果的な疲労回復方法や予防法も分かってきています。

 

疲労回復方法

具体的な方法としては、こちらで分かりやすく紹介されています。

こちらには、実践編として、疲労を予防するコツ(食事編)、疲労をとるコツ(睡眠編)、疲労を避ける・溜めないコツ(環境編)が挙げられています4)
興味のある方はそちらを読んで頂くか、私たちにお聞きください。

 

疲労に鍼灸は有効か?

ここでは、鍼灸師の目線で疲労回復を考えてみます。
まず、疲労回復の大前提に「休む」があります。

鍼灸治療を受けられる時点で、休息になります。
ただし、施術を受けられる環境や、施術スタイルにもよるでしょう。
鍼灸院までに何時間もかけて、数分の施術時間では、その通院がむしろ疲労につながることも考えられます。
そういう意味で、疲労回復を目的として鍼灸院に通われる場合は、通いやすさや施術内容も選ばれた方が良いでしょう。

どんな施術が疲労に対して有効かは、上記の書籍4) にヒントがあります。
鍼灸を受けて、よく眠れるようになったり、ご飯が美味しく感じたり、リラックスできるようになったということはよくあります。
鍼灸治療で、睡眠の質をあげたり、疲労回復効果のある栄養を吸収しやすく胃腸を整えたり、またその回復を促すような施術環境を提供することが、疲労に対する施術と言えるでしょう。

食事や環境となると、日頃の過ごし方が大事なので、その人に合った情報をアドバイスできることも重要です。

 

鍼灸で疲労回復のポイント

もう少し、施術内容について考えてみましょう。

疲労に関係する臓器の消耗や機能低下に、リン酸化eIF2α(=疲労因子FF)が広く関係することが示唆されています。
さらに「肝臓におけるインターロイキン1β(IL-1β)の産生が他の臓器に比して圧倒的に多く、疲労感の発生には、肝臓におけるeIF2αのリン酸化が主要な働きをしていると考えられた」5) とあります。

疲労による健康障害の分子機構に基づく予防法の開発. 近藤一博. より

確かに、疲れている人の肝臓の反応点は顕著です。
肝臓に限らず、臓器や組織の機能低下が「疲労」と言えます。
それら疲労因子が誘導する炎症性サイトカインの影響を受けた各部位の機能を改善させることも、疲労に対する治療と言えるでしょう。

反応点治療では、西洋医学的な各臓器に対する施術を行います。
疲労に対して、対症療法としてその反応点の見られる各臓器に、根本治療として「肝臓」反応点への施術が考えられます。

疲労がもっと一般的に見える化されて研究が進めば、疲労の回復や予防に、鍼灸も一つの候補になることでしょう。

(院)

 

参考文献

1) 疲労の分子神経メカニズムと疲労克服. 渡辺恭良.
2) 疲労ちゃんとストレスさん. 近藤一博.
3) すべての疲労は脳が原因. 梶本修身.
4) すべての疲労は脳が原因2<超実践編>. 梶本修身.
5) 疲労による健康障害の分子機構に基づく予防法の開発. 近藤一博.

帯状疱疹の痛みに鍼灸

最近、帯状疱疹になられる方が増えています。
帯状疱疹は疲労等で免疫力が落ちた時に発症します。
コロナ禍もあり、疲れが溜まっていたり、体力低下が増えているのだと想像します。

一般的には、痛み対策として鍼灸を選ばれますが、帯状疱疹の痛みに鍼灸が効くと知らない方がほとんどではないでしょうか。

帯状疱疹の皮疹が無くなっても残る痛みは「帯状疱疹後神経痛」と言われます。
帯状疱疹の皮疹によって、神経が障害されて起こる痛み(神経障害性疼痛)だと考えられています。
神経が障害されているからしょうがない、痛みと付き合っていきましょう、となってしまいます。

でも最近では、帯状疱疹に関連する痛みのほとんどが「筋膜性疼痛」ではないか、と考えるお医者さんも増えています。

山下クリニック コラム
帯状疱疹の痛みは誤解されているのではないか
http://www.yamashita-painclinic.com/taijou01.html

一般社団法人 日本整形内科学研究会 
https://www.jnos.or.jp/for_public

皮膚や皮下組織、筋膜が痛いのならば、ほぐせば治まります。

鍼灸では皮膚や筋肉の歪み、コリ、つっぱりを取っていきます。
すると痛みが和らぎ、回復していきます。

水膨れが落ち着いて、乾いていたら施術できます。
なるべく早く施術することで、皮疹を速く治し、皮膚や筋膜などに歪みができる事を防ぎます。

痛みは、内臓の不調からの反射(内臓ー体性反射)でも起こるので、関連する内臓の施術も重要です。

体の片側だけに感じる痛み、発疹に気付いたら、なるべく早く皮膚科を受診してください。
診断がついたら、鍼灸で痛み対策、免疫力対策をしましょう。

(副)

花粉飛散予測とアレルギー講演会

そろそろ花粉の季節が近づいてきました。
「花粉飛散予測 第3報」の今年の花粉飛散量は下のようになっています。
北海道は4月中旬~5月に飛散するシラカバ花粉の量を表しています。

日本気象協会 tenki.jp より

近畿では2月中旬頃から花粉が飛び始めるそうです。

花粉症は症状が出る前からの対策で過ごしやすさが変わります。

目や鼻、喉の粘膜が整い、潤いが保たれていれば、異物が血中に取り込まれて免疫細胞に見つかり炎症が起きる事を防げます。

アレルギーを持っていても、免疫細胞に見つからなければ炎症は抑えられます。

症状が出だすと、炎症を起こす免疫細胞がどんどん作られ始めるので、免疫細胞が作動して症状が出る前から粘膜を強くしておく事が大切です。

鼻や喉の粘膜強化は、コロナウイルス感染対策にもなります。
特にオミクロン株は喉の炎症が多く、肺炎にはなりにくいと言われています。

こまめな水分補給やうがい、鼻うがいは、鼻や喉にウイルスが留まって感染するのを防ぐ為にします。
粘膜が潤って、しっかり粘液を出せていれば、自力でもウイルスを洗い流せます。
免疫力とはバリア力とも言えます。
ぜひ今日から、目、鼻、喉の循環を良くするケアを始めてみて下さい。

2月のアレルギー週間では
「コロナウイルス感染症とアレルギー疾患」
というテーマのオンライン講演会も開かれます。
参加は無料ですが、事前申込みが必要です。
興味のある方は、日本アレルギー協会HP をご覧下さい。

(副)

 

第28回アレルギー週間市民公開講座

もうすぐ2月ですね。

今年も日本アレルギー協会主催による「第28回アレルギー週間市民公開講座」が全国で開かれます。

今年はWEBでの受講もできます。

参加は無料ですが、事前申し込みが必要です。

詳しくは、日本アレルギー協会HP、関西地区は、日本アレルギー協会関西支部HPをご覧ください。

体には、入ってくる異物を攻撃する免疫細胞だけでなく、過剰な免疫反応を抑える免疫細胞(制御性T細胞(Tレグ))が存在します。

アレルギー疾患のある人はこの制御性T細胞(Tレグ)が少ないのではないかと言われています。

大阪大学の坂口志文先生の著書「免疫の守護者、制御性T細胞とはなにか」にアレルギー疾患が増えた原因が推測されています。

『社会が衛生的になると、異物に接する機会が減るために、免疫はあまり鍛えられない。免疫系があまり刺激をうけず、病原体を攻撃する能力が十分に訓練されなくなる。』

『同時に衛生的な環境では免疫の過剰反応を抑える力も鍛えられない。』

『軽いおもりでバランスをとるやじろべえは、わずかな変化で一気にバランスを崩す。免疫系の全般的な機能低下で免疫系のやじろべえが不安定な人が多くなっているのではないか。』


アレルギー対策には、ある程度異物を取り込みながら免疫を鍛えていく必要がありそうです。

私たちの行う反応点治療では、アレルギー対策に肝臓と腸の施術をします。

過剰な免疫反応を抑える免疫細胞(Tレグ)は、腸で作られます。

肝臓は、腸で作られる免疫細胞の司令塔として調整したり、

ウイルス感染した細胞や老化した細胞を貪食してくれるNK細胞を増やす働きがあります。

肝臓と腸の働きを助けて体が免疫のバランスを取りやすくなるよう促します。

様々なアレルギー症状に対処するために、症状が出る前からケアできると効果的です。

肝臓と腸のケア、おすすめです。

(副)


2022年1月21日 | カテゴリー : アレルギー | 投稿者 : sorashiya

反応点治療 関西実技講習会 のお知らせ

《鍼灸講習会のご案内》

定期開催による「学ぶ → 実践 → さらに学ぶ」のサイクルで知識・技術習得!

痛みはどのように出現するのか?
自律神経とは?
内臓疾患に対する鍼灸治療はどのように行えばよいのか?
鍼をすると体にどのような反射が起こるのか?
など、毎回テーマを変えながら、2か月に1回、講習会を開催しています。

「鍼灸治療を解剖学的・生理学的に紐解いていく」そんな講習会です。
午前は講義・午後は実技の2本立てで、実技は習得レベルに合わせて指導しています。
初めての方や学生さんも安心してご参加いただけます。

一般社団法人 反応点治療研究会 主催
関西実技講習会

【2022年度 日程と各テーマ】
第1回 1月16日(日) 反応点治療とは ~反応点の出現と改善~
第2回 3月13日(日) 風邪に対する反応点治療(呼吸器系)
第3回 5月 8日(日) 胃腸障害に対する反応点治療(消化器系)
第4回 7月10日(日) 膀胱炎・生理痛に対する反応点治療(泌尿器生殖器系)
第5回 9月11日(日) 心臓に対する反応点治療(循環器系)
第6回 11月13日(日) 平衡感覚失調に対する反応点治療

<午前の部> 10:00~11:30 反応点治療の概論・各テーマ別の「講義」
<午後の部> 13:00~16:00 反応点治療の「実技」

【会場】 ミントはり灸院
    (JR六甲道駅より徒歩3分・神戸市灘区森後町3丁目1-5 ネオハイム六甲201号)

【対象者】 鍼灸師・鍼灸学校の学生

【参加費】 鍼灸師 7,000円 / 学生 5,000円
     (午前+午後 1回分の金額です。当日会場にてお支払いください)

【持ち物】 鍼灸道具(普段使っているもの)・スリッパ・筆記用具。
      服装は自由、ラフな格好で結構です。

【お申し込み】 以下のURLよりお申込みをお願いいたします。
       https://forms.gle/cmJvt1F3XuhCiKDZ6

**********************

※ 午前の講義のみ オンライン受講も可能です

 申込者は、1か月限定でアーカイブ視聴も可能です。
 当日参加が無理な方も、録画を後でご覧頂けます。
 反応点治療を知りたい方、会場での参加が難しい方、日時の都合が合わない方、
 下記サイトURLからお申し込みください。

【オンライン講習費】 鍼灸師2,000円 / 学生1,000円
  第1回 1月16日「反応点治療とは」のみ 無料公開しています。 

【お申し込み先】 https://hannouten.peatix.com/

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反応点治療関西講習会2022