施設か在宅か

いざ「介護」が必要になったときの選択肢として、大きく分けて二つあります。
施設」(特養、老健、グループホームなど)で見てもらうか、「自宅」で訪問介護(ヘルパー)に来て貰うか。
どちらが良いかは、介護を受ける人と、家族や周りの環境によります。

私の父の場合は、入院直後から「せん妄」症状が出ました。
高齢で環境の変化が大きいと、よくあることだそうです。
入院時に、病院からその説明冊子まで頂きました。

せん妄とは、
「時間や場所が急にわからなくなる見当識障害から始まる場合が多く、注意力や思考力が低下して様々な症状を引き起こします。」1)

治療と対策としては、
「せん妄が起きている原因に対しての処置・治療を行い、患者が落ちつき、安心できる環境 を整えます。ほとんどの症例で入院治療を行います。」1)

せん妄は、中枢症状であり、なぜそうなるかは神経伝達物質のアンバランス、神経障害等が考えられています。2)
その準備因子(個人の脆弱性)や誘発因子(外的要因)として、高齢、脳血管障害、感染症、脱水(電解質異常により脳神経細胞の低下)、緊急入院(環境の変化)、アルコール依存、せん妄の既往などがあります。
ちなみに、この上げた因子の全てが今回の父に当たり、成るべくしてなったとも言えます。

コロナ禍の入院では、家族の面会が一切できず、環境調整にも限界がありました。
面会できないということは、その間の家族の負担は減るものの、入院中のサポートは病院次第でもあります。
病院選びも慎重にです。
医療資源がひっ迫していると、それも難しい課題です。

「せん妄」に対して鍼灸に何が出来るか考えますが、入院中に起こることなので、鍼灸が介入できることはまれです。
文献を探しても、多くは中国(病院内で鍼灸も一般的)のものです。

このような「せん妄」状態では、急性期が過ぎてもリハビリは進まず、入院していることが 害 にもなってきます。
すると、次なる選択肢は、介護施設に移るか、自宅に戻るかです。

介護施設では、病院よりは環境調整が可能になります。
施設にもよりますが、普段の生活に近い状況で、細かなケアを受けられることもあります。
しかし、入院前からの環境の変化を考えれば、病院と同じ結果も考えられます。
コロナ禍では、病院同様、家族の面会に制限があるところも少なくありません。
そもそも、すぐに入れる良い施設が見つかるか、見つけられるか問題もあります。

そうなると、住み慣れた自宅に帰って過ごすことが、選択肢に上がります。
入院前からの環境変化が防げ、そして何より自由です。
ですが、状態によっては、家族の協力や医療・介護サービスの利用が必要になってきます。

そして、私の父は、自宅に戻りたいという本人の希望と、家族のサポートも可能ということで、在宅での介護 を選びました。
鍼灸治療も自由に受けられます。

介護が必要となってみないと分からないこともありますが、どうありたいか、本人と家族の希望や同意、予め考えておいた方が良いのでしょう。

でも実際は、必要に迫られて、その時の状況で、選択していくことになるのでしょう。
そんな時に相談できる「介護に詳しい人」を見つけておくことが、大事なのかもしれません。

(院)

 

1) せん妄.
公益財団法人長寿科学振興財団
健康長寿ネット

2) 高齢者のせん妄の機序.
日本老齢医学会雑誌. 2014.