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介護サービスを受けるには
父が退院してあっという間の1週間でした。
その割にはいつもよりブログが書けています。
見守りや待機で時間ができたのと、家族についてだからですね。
患者さんや利用者さんのことは守秘義務があり詳しく書けませんが、家族のことなら具体的にも書けます。
この1週間、ケアマネジャー、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、介護士、鍼灸師(私達)の誰かしらが毎日入ってくださっています。
特に、退院後の2週間は、基本的な制限に縛られず「医療保険」による訪問看護が利用できます。
「特別訪問看護指示書」といって、主治医が頻繁な回数の訪問看護が必要と認めると交付されます。
(理学療法なども含まれます1)。)
では、「介護保険」を利用した、介護サービスについてはどうでしょう?
今すぐ介護を受けたい!と言って、すぐに利用できるわけではありません。
公的な介護サービスを受けるには、申請手続きが必要です。
(自費ならすぐ利用できるサービスもあります。)
その流れは、こちらをご参考ください。
芦屋市サイト
>介護保険
>手続き方法(サービス利用までの流れ)
https://www.city.ashiya.lg.jp/kaigo/tetsuzuki.html
私の父は、入院前は独居で自活できていて、介護サービスも利用していませんでした。
でも退院後は介護が必要だろうと判断し、入院中に認定調査の申請を行いました。
病院で、認定(訪問)調査が行われ、一次判定(コンピューター)、二次判定(介護認定審査会)を経て、認定結果が通知されます。
その結果で、要支援1~2・要介護1~5のいずれかの判定がおりれば、介護保険でのサービスを利用することができます。
申請から通知まで、約30日程度かかりますし、かかりました。
在宅サービスの場合は、認定結果が出る前から生活が始まることもあるので、通知前に暫定的にサービスを利用することもできます。
その結果を待っている間に、施設を探したり、在宅であれば住環境を整えたりもします。
ポータブルトイレのように購入しなければいけないものや、歩行器、手すりなど、レンタルできるものもあります。
ケアマネージャーや福祉用具に詳しい方と相談されると良いでしょう。
病院での父の状態が詳しく分からなかったので、いくつか選択肢を用意しながら、実際の生活をしながら、器具や設備も取捨選択していくことになりました。
ここでも、やはり臨機応変に、その場に応じて対応していくことになります。
認定調査の申請をして、結果が出るまでには、時間もかかります。
その間に、家族や本人の希望を、すり合わせていきました。
徐々に介護が必要となれば、徐々に準備をすれば良いでしょう。
けど、病気などの入院をきっかけに介護が必要となれば、これまでの生活から大きく変わることもあります。
高齢になると、入院をきっかけに、急にできないことが増えることもあります。
介護が必要と感じたら、早めに申請するのが良いでしょう。
あと、はじめのチームに鍼灸師を含みましたが、一般的には、鍼灸師は入っていません。
鍼灸治療は、「介護保険」内では利用できません。
医師の診断があれば一部「医療保険」を利用することはできます。
但し対象疾患が限られているので、全身治療でもしようと思うと、自費になります。
鍼灸が医療として認められていない現状もあります。
実際、私自身もどんな鍼灸師にでもお願いしたいとは思いません。
鍼灸治療が医療として認められるには、鍼灸師の質を上げていくことは大きな課題としてあります。
(院)
1)全国訪問看護事業協会
「訪問看護事業所における看護職員と理学療法士等のより良い連携のための手引き」
https://www.zenhokan.or.jp/new/new1564/
施設か在宅か
いざ「介護」が必要になったときの選択肢として、大きく分けて二つあります。
「施設」(特養、老健、グループホームなど)で見てもらうか、「自宅」で訪問介護(ヘルパー)に来て貰うか。
どちらが良いかは、介護を受ける人と、家族や周りの環境によります。
私の父の場合は、入院直後から「せん妄」症状が出ました。
高齢で環境の変化が大きいと、よくあることだそうです。
入院時に、病院からその説明冊子まで頂きました。
せん妄とは、
「時間や場所が急にわからなくなる見当識障害から始まる場合が多く、注意力や思考力が低下して様々な症状を引き起こします。」1)
治療と対策としては、
「せん妄が起きている原因に対しての処置・治療を行い、患者が落ちつき、安心できる環境 を整えます。ほとんどの症例で入院治療を行います。」1)
せん妄は、中枢症状であり、なぜそうなるかは神経伝達物質のアンバランス、神経障害等が考えられています。2)
その準備因子(個人の脆弱性)や誘発因子(外的要因)として、高齢、脳血管障害、感染症、脱水(電解質異常により脳神経細胞の低下)、緊急入院(環境の変化)、アルコール依存、せん妄の既往などがあります。
ちなみに、この上げた因子の全てが今回の父に当たり、成るべくしてなったとも言えます。
コロナ禍の入院では、家族の面会が一切できず、環境調整にも限界がありました。
面会できないということは、その間の家族の負担は減るものの、入院中のサポートは病院次第でもあります。
病院選びも慎重にです。
医療資源がひっ迫していると、それも難しい課題です。
「せん妄」に対して鍼灸に何が出来るか考えますが、入院中に起こることなので、鍼灸が介入できることはまれです。
文献を探しても、多くは中国(病院内で鍼灸も一般的)のものです。
このような「せん妄」状態では、急性期が過ぎてもリハビリは進まず、入院していることが 害 にもなってきます。
すると、次なる選択肢は、介護施設に移るか、自宅に戻るかです。
介護施設では、病院よりは環境調整が可能になります。
施設にもよりますが、普段の生活に近い状況で、細かなケアを受けられることもあります。
しかし、入院前からの環境の変化を考えれば、病院と同じ結果も考えられます。
コロナ禍では、病院同様、家族の面会に制限があるところも少なくありません。
そもそも、すぐに入れる良い施設が見つかるか、見つけられるか問題もあります。
そうなると、住み慣れた自宅に帰って過ごすことが、選択肢に上がります。
入院前からの環境変化が防げ、そして何より自由です。
ですが、状態によっては、家族の協力や医療・介護サービスの利用が必要になってきます。
そして、私の父は、自宅に戻りたいという本人の希望と、家族のサポートも可能ということで、在宅での介護 を選びました。
鍼灸治療も自由に受けられます。
介護が必要となってみないと分からないこともありますが、どうありたいか、本人と家族の希望や同意、予め考えておいた方が良いのでしょう。
でも実際は、必要に迫られて、その時の状況で、選択していくことになるのでしょう。
そんな時に相談できる「介護に詳しい人」を見つけておくことが、大事なのかもしれません。
(院)
1) せん妄.
公益財団法人長寿科学振興財団
健康長寿ネット
2) 高齢者のせん妄の機序.
日本老齢医学会雑誌. 2014.
親の介護が始まりました
今週、昨年4月から始まった学校での授業が終わりました。
学生さんのテスト結果も良くてホッとしています。
次年度以降は今年度のくり返しで、少し余裕ができるかなと思っていたら…
父の介護の始まりです。
今回の脳梗塞と約1か月半の入院生活は、厳しいものでした。
入院前のように一人での生活は難しく、介護サービスを利用しての生活が始まりました。
病気や介護は予防が大切です。
そうならないようにケアするのが大事なのですが、自分の親に至っては不十分でした。
身近な家族のケアや介護の難しさも感じます。
過ぎた過去の生活習慣も変えられませんし。
それよりも、これから何が出来るか。
介護が始まると、これまでの生活も一変します。
記事を書いている時間も惜しいです。
落ち着いてからまとめるのも考えたのですが、その最中に思うことは多いです。
それと隠しがちな介護のことを、周りの人に知ってもらうことも大事かなと思います。
学生にも、インプットだけでなく、アウトプット=人に伝えることが大切だと度々 伝えています。
(私が苦手なのもありますが…)
間違いや失敗もあるかもしれませんが、それも学びです。
鍼灸師と少し介護士の目線で、親の介護を通して感じたことや出来ることを、書き残していきたいと思います。
それが、同じく今、介護をしている方や、いつか介護が始まる方のお役に立てば幸いです。
介護は大変です。
嫌なことに目を向ければいくらでも見えてきますが、その中でも良いことを見つけていきたいと思います。
そして気負わず、たまに気も抜きながら、ぼちぼち更新していきます。
(院)
疲労にも鍼灸
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疲れていますか?
コロナ禍、風邪は引かなくなったけど、「なんか疲れたな~」、「しんどいな~」という方は増えているように感じます。
今週、そんな鍼灸院でもよく出会う「疲労」をテーマに、授業をしました。
「今、疲れている人?」と質問すると、8割近くの学生が手を挙げました。
ですが、世界的にはそうでもないようで、アメリカで同じ質問をしても「はい」と答えるのは、1割未満だそうです1)。
アメリカでは疲れたら休むのが常識のようで、「疲労」については、研究対象になりにくいようです。
疲労の概念に変化
ところが、日本では深刻で、「KAROSHI」がそのまま単語になるくらい、大問題です。
そこで、日本の疲労研究が世界をリードしはじめます。
疲労の原因物質が特定されたり、これまで主観的だった疲労を客観的に示せるようになり、従来の疲労の概念も変化してきています。
その一つ、かつては乳酸が疲労の原因とも言われていましたが、現在、それは否定されています2)。
運動強度の指標にはなりますが、疲労物質にはなりません。
むしろ、エネルギーの再利用、疲労回復にも役立っていることが分かっています。
疲労の原因、引き金となるのは「活性酸素」とされています3)。
また、「疲労回復」を謳っていた栄養ドリンクの効能も、「疲労感の軽減」と表記されたりしています。
つまり、疲労感を軽くさせても、疲労は回復していなかったということです。
むしろ、疲労感なき疲労が、過労死やうつ病を導くとも言われています。
ストレスによって、疲労感が抑えられることもあります2)。
ストレスを受けたときに分泌されるコルチゾールやアドレナリンによって、疲労感の原因となる炎症性サイトカインを抑制し、疲労を感じなくさせるようです。
ランナーズ ハイはその分かりやすい例ですね。
疲労の予防と回復
では、その疲労を根本的に予防や回復するためにはどうすれば良いでしょうか?
やはり「休む」ことです。
そんなことは当たり前なので、効果的な休息を考えます。
よく聞く神経疲労も、同じ神経回路ばかりを使っていると、シナプス間の神経伝達物質の枯渇が起こり、閾値が上がります。
閾値が上がれば、反応も鈍くなり、パフォーマンスも低下します。
それを防ぐには、その神経回路を使わない、つまりは休むことに他ならないのです。
特に細胞体の小さい脳神経は、顕著です。
神経の性質から考えても、広くまんべんなく使う、「飽きた」と思う前に休むことが、効果的なのです。
(疲労の兆候として、飽きる、眠くなる、パフォーマンスの低下が挙げられています。)
120分作業して30分の休息を取るのにも、40分作業して10分休むのを3回繰り返した方が、作業効率は良くなります。
また、前述した近年の日本での疲労研究の進展により、疲労因子FF(Fatigue Factor)と疲労回復因子FR(Fatigue Recover factor)が発見されています。
疲労度を客観的に表すことも可能になっています。
それが、ヒトヘルペスウイルスのHHV-6、HHV-7です。
疲れた時に口の周りに出たりする、あの原因ウイルスです。
唾液に出てきたヒトヘルペスウイルスの量を調べることによって、疲労の程度が見える化されます。
そんな疲労研究の進展により、効果的な疲労回復方法や予防法も分かってきています。
疲労回復方法
具体的な方法としては、こちらで分かりやすく紹介されています。
こちらには、実践編として、疲労を予防するコツ(食事編)、疲労をとるコツ(睡眠編)、疲労を避ける・溜めないコツ(環境編)が挙げられています4)。
興味のある方はそちらを読んで頂くか、私たちにお聞きください。
疲労に鍼灸は有効か?
ここでは、鍼灸師の目線で疲労回復を考えてみます。
まず、疲労回復の大前提に「休む」があります。
鍼灸治療を受けられる時点で、休息になります。
ただし、施術を受けられる環境や、施術スタイルにもよるでしょう。
鍼灸院までに何時間もかけて、数分の施術時間では、その通院がむしろ疲労につながることも考えられます。
そういう意味で、疲労回復を目的として鍼灸院に通われる場合は、通いやすさや施術内容も選ばれた方が良いでしょう。
どんな施術が疲労に対して有効かは、上記の書籍4) にヒントがあります。
鍼灸を受けて、よく眠れるようになったり、ご飯が美味しく感じたり、リラックスできるようになったということはよくあります。
鍼灸治療で、睡眠の質をあげたり、疲労回復効果のある栄養を吸収しやすく胃腸を整えたり、またその回復を促すような施術環境を提供することが、疲労に対する施術と言えるでしょう。
食事や環境となると、日頃の過ごし方が大事なので、その人に合った情報をアドバイスできることも重要です。
鍼灸で疲労回復のポイント
もう少し、施術内容について考えてみましょう。
疲労に関係する臓器の消耗や機能低下に、リン酸化eIF2α(=疲労因子FF)が広く関係することが示唆されています。
さらに「肝臓におけるインターロイキン1β(IL-1β)の産生が他の臓器に比して圧倒的に多く、疲労感の発生には、肝臓におけるeIF2αのリン酸化が主要な働きをしていると考えられた」5) とあります。
確かに、疲れている人の肝臓の反応点は顕著です。
肝臓に限らず、臓器や組織の機能低下が「疲労」と言えます。
それら疲労因子が誘導する炎症性サイトカインの影響を受けた各部位の機能を改善させることも、疲労に対する治療と言えるでしょう。
反応点治療では、西洋医学的な各臓器に対する施術を行います。
疲労に対して、対症療法としてその反応点の見られる各臓器に、根本治療として「肝臓」反応点への施術が考えられます。
疲労がもっと一般的に見える化されて研究が進めば、疲労の回復や予防に、鍼灸も一つの候補になることでしょう。
(院)
参考文献
1) 疲労の分子神経メカニズムと疲労克服. 渡辺恭良.
2) 疲労ちゃんとストレスさん. 近藤一博.
3) すべての疲労は脳が原因. 梶本修身.
4) すべての疲労は脳が原因2<超実践編>. 梶本修身.
5) 疲労による健康障害の分子機構に基づく予防法の開発. 近藤一博.
帯状疱疹の痛みに鍼灸
最近、帯状疱疹になられる方が増えています。
帯状疱疹は疲労等で免疫力が落ちた時に発症します。
コロナ禍もあり、疲れが溜まっていたり、体力低下が増えているのだと想像します。
一般的には、痛み対策として鍼灸を選ばれますが、帯状疱疹の痛みに鍼灸が効くと知らない方がほとんどではないでしょうか。
帯状疱疹の皮疹が無くなっても残る痛みは「帯状疱疹後神経痛」と言われます。
帯状疱疹の皮疹によって、神経が障害されて起こる痛み(神経障害性疼痛)だと考えられています。
神経が障害されているからしょうがない、痛みと付き合っていきましょう、となってしまいます。
でも最近では、帯状疱疹に関連する痛みのほとんどが「筋膜性疼痛」ではないか、と考えるお医者さんも増えています。
山下クリニック コラム
「帯状疱疹の痛みは誤解されているのではないか」
http://www.yamashita-painclinic.com/taijou01.html
一般社団法人 日本整形内科学研究会
https://www.jnos.or.jp/for_public
皮膚や皮下組織、筋膜が痛いのならば、ほぐせば治まります。
鍼灸では皮膚や筋肉の歪み、コリ、つっぱりを取っていきます。
すると痛みが和らぎ、回復していきます。
水膨れが落ち着いて、乾いていたら施術できます。
なるべく早く施術することで、皮疹を速く治し、皮膚や筋膜などに歪みができる事を防ぎます。
痛みは、内臓の不調からの反射(内臓ー体性反射)でも起こるので、関連する内臓の施術も重要です。
体の片側だけに感じる痛み、発疹に気付いたら、なるべく早く皮膚科を受診してください。
診断がついたら、鍼灸で痛み対策、免疫力対策をしましょう。
(副)