日本人の睡眠障害とその評価方法

私たちの所属する 反応点治療研究会 では、毎月勉強会があります。
いろんな先生の持ち回りで症例報告や研究発表を行います。
私(院長)の担当は、8月でした。

 

毎年、何をテーマに発表するか悩みますが、今年は「睡眠」にしました。
患者さんの訴えとしても多く、日本人の7割が睡眠に満足していないという報告もあります。
OECD加盟33か国で日本の睡眠時間が断トツのワースト1位であることはご存じの方も多いと思います。
その睡眠障害による経済損失は15兆円(GDP比で約3%)にものぼる「不眠大国」として、世界でも認識されています。1)

また、睡眠障害は様々な疾病につながることも指摘されています。
うつ病などの精神的疾患から、糖尿病、高血圧などの生活習慣病のリスク要因になることも言われています。2) 

その睡眠障害は認識しにくいものですが、最近の国内の研究では、熱帯夜による睡眠障害が、熱中症の健康被害に匹敵するという報告もありました。3)

 

そんな睡眠障害に対する、鍼灸治療の研究も数多くありますが、その評価は主観的な指標であるものがほとんどです。
今年の全日本鍼灸学会の一般演題でも、3題程見かけましたが、その評価方法も被験者自身が眠りを評価する「ピッツバーグ睡眠評価票」でした。

 

客観的な指標としては、医療機関で脳波を調べる検査がありますが、普段の睡眠状態とは大きくかけ離れてしまうことも指摘されています。
自宅で簡単に脳波を調べるサービスもありますが、それなりに費用もするので、個人で継続して試すにはハードルが高いものです。4)

 

そんな背景に対して、現在、個人で睡眠状態を測定できるウェアラブル装置、いわゆるスマートウォッチなどが登場しています。
ウェアラブル端末は若年層に受け入れやすく、睡眠習慣への関心を高めるツールとして有効であるという報告もあります。5)

 

私も1年ほど前から装着していて、自分の感じる睡眠状態(主観)と、スマートウォッチが測定する睡眠状態(客観)は、一致しているようにも感じます。
そして実際、その測定された睡眠状態を見て、良い睡眠を取るように心掛けることもありました。

 

これらを踏まえて、今回、ウェアラブル装置を用いた睡眠評価の妥当性を検討するとともに、私たちの反応点治療が、睡眠状態にどのように影響を及ぼすのかを調べてみました。

 
(続く)

 

1) よく眠る会社が勝つ 睡眠はもう個人だけの問題ではない
https://forbesjapan.com/articles/detail/51406

2) 駒田陽子, 井上雄一. 睡眠障害の社会生活に及ぼす影響. 心身医学. 47: 785-791. 2007.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/47/9/47_KJ00004675970/_pdf

3) Tomohiko Ihara, et al. Lossofdisability-adjustedlifeyearsduetosleepdisturbancecausedbyclimate change. Sleep and Biological Rhythms volume 21, pages69–84. 2023.
https://link.springer.com/article/10.1007/s41105-022-00419-z

4) 株式会社S’UIMIN 睡眠計測サービス「InSomnograf(インソムノグラフ)」
https://www.suimin.co.jp/

5) 葦原摩耶子, 飯田葉月. ウェアラブル端末を用いた睡眠習慣変容プログラムの試み. ジュニアスポーツ教育学科紀要. 6: 1-8. 2018.
https://kobe-shinwa.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=2667&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1

 

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