災害支援とOB会セミナー

先週末、副院長は能登へ災害支援へ、院長は神戸で災害支援講義でした。
(能登支援についてはこちら → はり灸レンジャー第3回能登支援

二人が卒業した神戸東洋医療学院のOB会(天馬会)の総会後に引き続き、卒業生と学生が対象の合同セミナーがあり、「鍼灸ボランティアのはじめ方」というタイトルで、はり灸レンジャーの東北、熊本、能登半島での災害支援活動についてお話しさせて頂きました。

実は13年前のOB会セミナーでもお話しさせて貰っていました。
2011年、東日本大震災のあった年です。
その時は、被災障害者を支援する団体「ゆめ風基金」を通して、一ボランティアとして感じた被災地の様子を報告しました。

OB天馬会セミナー2011
(13年前のOB会セミナー)

まさかその先13年も東北支援が続き、こうして日本各地の災害支援に携わっているとは、思いもよりませんでした。

そんな「はり灸レンジャー」の成り立ちから、卒業生同士のつながり、被災地の様子、鍼灸でどんなことをしてきたか、ボランティアを始めるために必要なことなど。

OB会セミナー2024
(今回のOB会セミナー)

実技も入れて欲しいということで、セミナー会場を「避難所」と見立てて、ベッドの設営から施術の様子も紹介。
実際のボランティア現場では一人で活動することが無いので、とても焦りましたが、90分間、あっという間に時間は過ぎました。

何か忘れている気がしてならなかったのですが、案の定、片付けしている時に、いくつか紹介し忘れていたものに気付きました。
(写真にも写っている、机にも置いている施術マットなど…)

それは慌ただしいボランティア活動中にもあることで、準備がいかに重要か、改めて学びました…

セミナー後に、災害支援に興味のある学生さんが声をかけてくれたり、紹介した災害支援研修を申し込んでくれたりと、早速、行動に移してくれたことが嬉しかったです。

被災地で大変な思いをされている方々にもっと支援が届くように、発信も続けていきたいと思います。

(院)

5年振りの南三陸町

先週末、5年ぶりに東北訪問を果たすことができました。

東日本大震災の災害支援ボランティアとして、2011年から毎年、ときには年2~3回、東北に通っていた時期もありました。
仮設住宅から復興住宅や自宅再建へと移り始め(宮城県の仮設住宅の解消は2021年3月)、そろそろ災害支援としての訪問は終わるのかと思っていたところ…

新型コロナウイルス感染症の流行により、しばらくお伺いできなくなってしまいました。
コロナ禍も落ち着き、そろそろお伺いしても良いかと思っていたところ、今年の全日本鍼灸学会が仙台で開催、さらに、はり灸レンジャーの災害支援活動をシンポジウムで紹介することが決まりました。
仙台まで行って、南三陸町まで行かないわけにはいかないと、今回の東北訪問へとつながりました。

 

鍼灸学会の翌日、レンタカーで南三陸へと向かい、新しく建設された南三陸311メモリアル、追悼モニュメント、旧防災対策庁舎のある「南三陸町震災復興祈念公園」に向かいます。

南三陸町震災復興祈念公園

 

高く土地が盛られていて、元の位置に遺された旧防災対策庁舎がとても低く感じました。
5年前は工事中だったので風景は様変わりしています。
遺族の方は、庁舎の取壊しを望まれましたが、宮城県の管轄となり、遺される事が決まったようです。
私たちにとっては、津波の恐ろしさを知ることが出来る貴重な遺構となります。

南三陸町総合防災庁舎

 

南三陸311メモリアルのプログラムや展示は、震災が起きたら何ができるのか、自分事として考えられるように工夫されていました。
被災された方にとっては、当時を思い出すつらい内容かもしれません。
災害を経験したことがない人にとっては、防災や訓練の大切さ、人の命の尊さを実感できる内容です。
南三陸町を訪れた際は、是非、体験して欲しいプログラムでした。

南三陸311メモリアル

続いて、5年前はスケジュールが合わず伺えなかった『奏海の杜』の「交ゆう館かなみ」にお伺いしました。
新しい拠点に移られてから、初めての訪問です。

にこまーる

 

今回は平日昼間ということもあり、放課後デイの子どもたちはおらず、スタッフの方4人の施術をしました。
初めての方も2人おられましたが、鍼灸の効果を感じて喜んで下さりました。
セルフケアもしっかりお伝えすることができました。

奏海の杜「交ゆう館かなみ」

 

2012年から施術を受けて下さっている懐かしい方にもお会いでき、8年ぶり、10回目の施術をさせて頂きました。
近況もお伺いできて、とても嬉しかったです。
震災当初は鍼灸の経験もなく、コワゴワでしたが、今では楽しみに待ってくださっていました。
ご家族へのセルフケアもお伝えできて良かったです。
これを機に、またコロコロしていただきたいと思います。

今回の訪問は、震災から13年が経ち、被災地支援とは言えないのかもしれません。
それでも訪問を待ってくださる方がいて、私たちも会いたいと思う、そんな関係性があります。

これからも顔の見える繋がりを大切にしていきたいです。

(森川)

全日本鍼灸学会での発表

毎年、年1回、全日本鍼灸学会の学術大会があります。
今年2024年は宮城県初開催で、仙台国際センターが会場でした。

昨年の神戸大会に引き続き、13年前の東日本大震災の地ともあって、災害支援についてのプログラムも組まれていました。

全日本鍼灸学会プログラム

 

災害支援の「現状」として、はり灸レンジャーの長期支援について紹介させて頂きました。

長期的な支援は、はじめから意図していたものではなく、東北の復興に時間を要したことや、現地団体や被災者の方々からの要望に応える形で、実現したものになります。

長い復興過程では、生活再建が上手くいく人と、取り残される人の格差が徐々に開いていく「鋏状(きょうじょう・はさみじょう)格差」という問題もあります。
私たちが対象としてきた支援の届きにくい人や場所では、その支援の必要性をより感じます。

そういった長期支援の必要性、今後の課題などを、お話しさせていただきました。

(緊張の様子が伝わってきます…)

その他、災害鍼灸の「期待」、「課題」、そして能登半島地震の支援報告など、6人の鍼灸師や医師の発表があり、その後、討論も行われました。

全日本鍼灸学会シンポジウム

 

初めてのシンポジウムで緊張しましたが、座長の先生をはじめ、他の災害支援に関わる先生方のお陰で、何とか大役を務めることが出来ました。

災害支援に携わってくれる人が少しでも増えれば良いなと思っていたら、シンポジウム後に、参加の学生から「災害支援の為に何かできることは?」という有難いメッセージも頂けて、少しは貢献できたのかなと。

私たちの活動や、被災地での鍼灸師による災害支援のことを知って貰う為には、こういう発表も大切なことだと思いました。

今後も機会があれば発信していきたいと思います。

(院長)

はり灸レンジャー最近の活動

私たちが長く続けている「はり灸レンジャー」での鍼灸ボランティア活動。
昨年からの新型コロナウィルスの感染拡大により、東北や熊本など被災地への訪問ができなくなっています。
次回の訪問を約束していた中での不測の事態で、お互いに残念な気持ちでいっぱいでした。

私たち自身も日常生活や仕事において先の読めない状況が続きました。
昨年一年間は、被災地のことが気になりながらも、グループとしての活動はできないままでした。

そんな中、今年に入って毎月オンラインで開催されている「日本災害鍼灸マッサージ連絡協議会」の会合に参加させて頂いております。
災害時の連絡や情報共有の為に、全国の災害支援に関わる鍼灸マッサージ師の各団体で結成された会になります。

その会合をきっかけに、グループ内でもリモート会議が実施されるようになりました。
昨年中も被災地のニュースや現地団体とのやりとりは、連絡網を使ってシェアされていましたが、やはり顔を合わせての話し合いが大事と感じます。

そして一昨晩は、その連絡協議会の方で、私たち「はり灸レンジャー」の活動紹介をさせて頂きました。
私たちの団体設立経緯から、活動の特徴、今後の課題などもお話しさせて頂きました。

レンジャー紹介スライド

すると、私たちが当たり前のように出来ていたことが、そうでもなかったり、逆に出来ていないこともわかるようになります。
自分たちのことは、回りからの方が、よく見えることもあるようです。

連絡協議会には、いろんな立場で、鍼灸で困っている人の役に立ちたい!という思いの人が集まっています。
たくさんのご意見やアドバイスを頂くこともできて、毎回とても為になります。
共通するのは、災害時に限らず、「平時における取り組み」というのが、一つのキーワードに思います。

コロナ禍で出来ることは限られていますが、私たちの身の回りでも何か出来ることはないか、常にアンテナを張っておきたいと思います。
そして、コロナが落ち着いた頃に、これまでご縁のつながっている地域に、またお伺いしたいと願っています。

(院)