はり灸レンジャー能登半島支援

先週3月19日と20日、能登半島地震の災害鍼灸支援として、輪島市に行ってきました。

はり灸レンジャーとしては、約4年半振りの被災地での活動、初めての能登訪問でした。
被災障害者支援団体「ゆめ風基金」の紹介により、輪島市と民間団体が連携運営する地域の拠点にて鍼灸支援活動を実施しました。
近隣住民をはじめ、高齢者デイサービス、福祉避難所の方々の入浴支援の場としても活用されています。

はり灸レンジャーメンバー

 

久しぶりの活動で準備や慣れるまでに時間がかかりましたが、施術時間になると続々と施術を受けに来られました。
支援先の現地団体が、地域の拠点として愛され、また事前に活動の案内チラシを近隣の避難所や拠点の各所に掲示してくれていたからです。

鍼灸マッサージ体験チラシ

 

施術場所の設営では、他の鍼灸災害支援団体の活動で知ったマスカーテープを使うことで、施術空間を上手く区切り、目隠しをすることもできました。
これまでの私たちの活動ではプライバシーが十分に確保されていなかったことは反省点です。

問診票、カルテも、他団体のものを参考に新しく改訂されたものを用いました。
コロナ禍を経たこともあって、体温測定や、血圧測定なども実施。
他団体と連携、活動を繰り返すことで改善されていった内容です。

マスカーテープで目隠し

 

施術に用いた鍼や鍼皿、消毒綿花は、セイリン社より提供して頂きました。
これまでの災害支援においても、必要なものを届けてくださっています。
ある程度継続した活動が見込まれれば、助成金を獲得し、活動資金から購入することも出来ますが、初動でこういった支援物資を提供して頂けることは、非常に有難いことです。

セイリン社より提供

 

現在の被災地での道路状況ですが、ちょうど訪問する直前(3月15日)に「のと里山海道」の下り線が全線開通し、金沢から輪島までのアクセスが良くなりました。
それでも途中、応急復旧で道路に段差や片側車線があり、輪島から金沢の上り線はまだ一部区間で通行止めもあります。

のと里山海道復旧中

 

奥能登まで行って、ホテルが営業している金沢や富山を行き来するには移動時間がかかってしまいます。
それも支援が十分に行き届いていない要因の一つであると思われます。

今回の宿泊は、連携団体の紹介により、輪島市から近い七尾市の避難所にある支援拠点を利用させて貰いました。
被災者の方も利用する「段ボールベッド」や「仮設シャワー」も使わせて頂き、貴重な体験もさせて頂きました。

金沢まで戻らずに宿泊できることは、活動時間を確保することにもつながり、同じく能登支援をされていれるボランティアや団体との交流は心強く、刺激にもなりました。

段ボールベッド

 

災害支援において、他の団体と連携することの重要性と有難さを改めて実感しました。

 

二日目も昨日に引き続き、同拠点で鍼灸マッサージ施術を提供しました。
朝、拠点に向かう道中、ある被災者から施術希望の電話がありました。
チラシに連絡先を書いてあった為ですが、それほど待ち望んでくれていたことが嬉しかったです。

この日は朝早く宿泊先を出発したので、拠点のある輪島市内に早めに到着しました。
大規模な火事のあった輪島朝市もすぐ近くにあり、周辺の被災現場を回りました。
道路も波打ち、倒壊したり消失した建物もあまり手つかずのようにも思えました。
復旧の先の復興には時間がかかるように感じられました。

輪島朝市

 

この日一番に施術を受けられたのは、昨日ご挨拶に行った同じ町内にある鍼灸院の先生でした。
自ら被災されているにも関わらず、活動の様子を見に差し入れを届けてくださりました。
お忙しい中、施術も受けて頂きましたが、お身体からそのご苦労が感じ取られます。
地元鍼灸院の先生を支援することも、外部から来た鍼灸師の役目です。

そして、昨日の施術を受けて良かったからと、7名の方が二日連続で受療されました。
また、昨日配布したセルフケア用品を使う人を見て、興味を持ち受療しに来てくれた方もいました。
これまでの被災地同様、同じ場所で継続して支援すると、施術後の経過を知ることも出来てお互いに良いことだと感じます。

施術の様子

 

受療者の主訴としては、痛み、倦怠感、睡眠に対する悩みが圧倒的に多いです(91%)。
これまでの被災地でもそうだったが、空気が悪く、鼻や咽といった呼吸器系の不調も多いです。
それに伴い、頭痛、首肩こり、背中の痛みなどの訴えも多かったです(54%)。

この日は西日本を中心に悪天候となる予報でした。
石川県内もこの時期にも関わらず、雪や風が強まる予報で、帰りの交通手段が早めに途絶えるかもしれないニュースが入りました。
多くのメンバーが翌日朝から仕事も控えていたため、活動を早めに切り上げ、帰路につかせて頂くことにしました。
忘れ物、落とし物がないように、受け入れて頂いた現地の団体にご迷惑をかけないように、後片付けもしっかりして撤収しました。

後片付け

 

帰り道は予報通り、雨と雪と霙と風が吹き付け、北陸の自然の厳しさをまざまざと見せつけられました。

輪島市内

 

能登半島地震は、半島の先に行けば行くほど被害も大きくなり、アクセスも悪くなります。
発災からもうすぐ3か月が経ちますが、倒壊した建物はそのままのところも多く、復興には長い時間がかかると思われます。

被災地に実際に足を運び、その光景を目にし、被災者の声を聞くことで、その現状とこれからを痛感します。

はり灸レンジャーとしては、関連団体と連携し、細く長く、継続した支援を行う意向です。

治療院の患者さんにはご迷惑をおかけするかもしれませんが、ご理解とご協力を宜しくお願い致します。

(院)

はり灸レンジャー最近の活動

私たちが長く続けている「はり灸レンジャー」での鍼灸ボランティア活動。
昨年からの新型コロナウィルスの感染拡大により、東北や熊本など被災地への訪問ができなくなっています。
次回の訪問を約束していた中での不測の事態で、お互いに残念な気持ちでいっぱいでした。

私たち自身も日常生活や仕事において先の読めない状況が続きました。
昨年一年間は、被災地のことが気になりながらも、グループとしての活動はできないままでした。

そんな中、今年に入って毎月オンラインで開催されている「日本災害鍼灸マッサージ連絡協議会」の会合に参加させて頂いております。
災害時の連絡や情報共有の為に、全国の災害支援に関わる鍼灸マッサージ師の各団体で結成された会になります。

その会合をきっかけに、グループ内でもリモート会議が実施されるようになりました。
昨年中も被災地のニュースや現地団体とのやりとりは、連絡網を使ってシェアされていましたが、やはり顔を合わせての話し合いが大事と感じます。

そして一昨晩は、その連絡協議会の方で、私たち「はり灸レンジャー」の活動紹介をさせて頂きました。
私たちの団体設立経緯から、活動の特徴、今後の課題などもお話しさせて頂きました。

レンジャー紹介スライド

すると、私たちが当たり前のように出来ていたことが、そうでもなかったり、逆に出来ていないこともわかるようになります。
自分たちのことは、回りからの方が、よく見えることもあるようです。

連絡協議会には、いろんな立場で、鍼灸で困っている人の役に立ちたい!という思いの人が集まっています。
たくさんのご意見やアドバイスを頂くこともできて、毎回とても為になります。
共通するのは、災害時に限らず、「平時における取り組み」というのが、一つのキーワードに思います。

コロナ禍で出来ることは限られていますが、私たちの身の回りでも何か出来ることはないか、常にアンテナを張っておきたいと思います。
そして、コロナが落ち着いた頃に、これまでご縁のつながっている地域に、またお伺いしたいと願っています。

(院)