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SORA鍼灸院のブログです。

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ピロリ菌はいかに?

以前、ピロリ菌の除菌治療をした記事を書きました。

ピロリ菌の除菌治療
https://sorashiya.com/eradication-of-h-pylori/

 

実際に除菌できているかを確かめるには、服薬終了後、1か月以上経過して検査が必要です。
その検査に行ってきました。

今回は、「尿素呼気試験法(UBT)」という検査を実施しました。
その検査法の流れとしては、

  1. 容器に息を吐いて、呼気を採取します。
  2. 試験薬を飲みます。
  3. 20分ほど置いてから、再び呼気を採取します。

そんな息を調べるだけで、どうやって菌がいるのが分かるのか?と思いましたが、イラストのような原理のようです。

尿素呼気試験の原理
大塚製薬「ピロリ菌の検査と除菌治療」より

 

患者さんへの侵襲性(検査に伴う痛みや苦痛などの負担)も少なく、
感度(病気がある人をあると検出する確率)97.7~100%、
特異度(病気の無い人を無いと検出する確率)97.9~100%と、
ともに精度の高い検査です。

 

ちなみにその検査は、除菌治療から検査前までに、

  • 抗生剤、プロトンポンプ阻害薬(PPI)を服用していない
  • 8時間前から絶食

しておく必要があります。

正確な判定をする為には、正しく検査を受ける為の「準備」があります。
当日検査できるからと言って、何も下調べせずに、当日ポッと行かないようにしなければいけませんね。
(そのつもりでしたが、何となく疑問に思って調べて正解でした。)

 

そしてその検査結果は…
陰性」でした!

つまり、「ピロリ菌はいないだろう」、
という結果になりました

 

もし「陽性」となれば、ピロリ菌除菌の再治療が必要でした。
前回の経験から、気が進まない治療でしたが、しなくて済んで、一安心です。

 

ただ、お医者さんからも伝えられましたが、ピロリ菌がいなくなったからと言って、胃がんのリスクが急になくなるわけではありません。
これまで40年?近く存在していたわけで、胃粘膜が荒らされている可能性もあります。
除菌後もしばらくは、内視鏡検査などを勧められました。
そして、成人になってからの再感染は少ないようですが、免疫力が落ちているときに入ってくると、また感染する可能性も0では無いようです。
衛生状態が悪いものの飲食は、注意です。

 

それと、ピロリ菌で抑えられていた(中和されていた)胃酸の分泌を、過剰に感じるかもしれません。
つまり症状としては、胃のむかつきや、胸焼け、逆流性食道炎などです。
それも時間と共に落ち着いていくことが多いようです。
きっと身体が適応していくのでしょう。
実は最近、みぞおち辺りや就寝時に寝返りが痛く感じるのは、その影響かもしれません。
食道をセルフケアして、穏やかに治まることを願っています。

 

ただ、こうして不調があると、身体のことを大事にするようになりました。
若い頃のように、日にちが経てば知らないうちに治っていることも少なくなく、時間を要するようにもなりました。
痛みや不快感は、からだのSOSかもしれないので、無視しないようにしたいと思います。

 

今回の検査、治療、検査で学んだこと

  • 自分の身体のことは、よくわかっていない
  • 検査や治療は、調べてから受けよう
  • 無病息災より、一病息災

 

(院)

ローラー鍼刺激による睡眠状態の変化

患者さんは鍼灸治療を受けると「良く眠れた」とよく聞きますが、実際にその効果はどうなのでしょうか?
また、睡眠をより良くする効果的な治療ポイント、セルフケア方法などが分かれば、実践してもらいやすくなります。
そこで、反応点治療でよく用いるローラー鍼刺激が、睡眠に与える影響を調べました。

 

睡眠障害に対する鍼灸治療の効果の研究では、睡眠評価の多くが主観的、つまり被験者(患者さん)自身がどう感じたかになります。
患者さんがどう感じるかも大事なのですが、その評価はいい加減なところもあります。
自分のことは分かっているようで、分からないことも多いものです。

患者さんの「良く眠れた!」が、本当にそうなのかを調べる為には、その睡眠状態を客観的に示す必要があります。
その方法として、今回、ウェアラブル装置(Garmin社製, Venu Sq Music)を用いました。

以前から、このスマートウォッチに睡眠モニタリングという機能があることは知っていました。
心拍数、HRV(心拍変動)、呼吸、活動レベルなどのデータをもとに、睡眠を3段階(深い睡眠・浅い睡眠・レム睡眠)に評価します。
自分でも良く眠れたと思った時は良く眠れた評価(深い睡眠時間が長い)で、いまいちだなと思った時はいまいちな評価(浅い睡眠時間が長い)でした。
気がかりなことがあると、よく眠れていない実感と評価も一致していました。

 

患者さんで検証する前に、まずは自分たちで試しました。
介入(施術)は、反応点部位へのローラー鍼刺激です。
患者さんご自身でケアできることを想定して、部位をいくつか絞り、刺激量も一定(5分間)刺激で検証します。

比較するのは、
・内耳点を刺激して寝た群
・鼻反応点を刺激して寝た群
・何もしないで寝た群
で、1週間ずつ記録します。

なぜ内耳点かと言うと、平衡感覚の失調が、自律神経機能を乱すと考えるからです。
めまい発作時は、寝てても頭を動かすと、目が回ります。
平衡失調の程度は大なり小なりありますが、その情報は睡眠障害の一つにもなると考えます。
めまい症と睡眠障害の関係性もいくつか報告されています。1)

次に、内耳点の刺激効果を調べる為には、それと比べる対照が必要です。
今回、その対照群には、何もしない無刺激群と、異なる部位として鼻の刺激群を設定しました。

それぞれの、
・総睡眠時間
・ピッツバーグ睡眠評価票(毎週)
・レム睡眠、浅い眠り、深い眠り(時間数)
・呼吸数(brpm)
・血中酸素(%)
を評価項目として睡眠状態を比較しました。

 

結果は…

まず、就寝時刻と起床時刻をできるだけ一定にしたので、総睡眠時間にほとんど差はありません。
主観的評価(ピッツバーグ睡眠評価票)もほとんど変わらず、呼吸数、血中酸素も一定でした。(個人差はありましたが、同じ人での群間差はほぼありませんでした)

そして睡眠段階として、深い睡眠時間と、浅い睡眠(レム睡眠)時間(分)はこちら。
(平均値 ± SD)

内耳点刺激で、若干の改善が見られましたが、それが偶然で無いかどうかは、もっとデータ数が必要です。

つまり、「内耳点にローラー鍼刺激をすれば良く眠れる!」と言えるかというと、まだ証拠不十分です。
それには、いくつか検証する必要があります。 

 

まず、このスマートウォッチの睡眠評価に、妥当性、信頼性があるか?
正確な睡眠評価を行うならば、脳波を調べる必要があります。
個人で導入するには難しいので、やはり簡易的な計測になりますが、
脳波で調べた場合と比較したい所です。

そして、今回たった二人のデータで、その二人が治療者でもあります。
その効果が、鍼灸の純粋な効果を示しているかは、あやしいところもあります。

その理由の一つに「プラセボ効果」があります。
被験者が良くなると思ってその介入(施術)を受けると、良くなるものです。
不眠症に対する過去の研究でも、実薬と偽薬を比較するとその差がなかった、つまり偽薬でも薬と同じような効果があったという報告もあります。2)
つまり、良く眠れると思えば、よく眠れることもあるということです。
そのプラセボ効果が働かないように、被験者も、試験者も、その介入が分からないようにするのが、二重盲検法です。

ただ、鍼灸の比較試験では、それが難しいとされています。
薬の場合、その薬効成分の入ったものと、入っていないものを、同じように飲むこともできます。
それが、鍼灸の場合、受けたことと、受けていないことを、それぞれに分からないようにすることは、困難です。
偽鍼といって、刺さない鍼を対照群とすることもあります。
が、刺さなくても効果が出ることはあるので、鍼灸の純粋な効果を示すことは難しいのです。

 

そういういくつかの制約や限界はありますが、それでも効果が出ることは、意味のあることだと思っています。
あとは、その鍼灸(反応点治療)単独の効果や再現性を、いかにクリアに示せるかです。

 

(院)

 
1) 許斐 氏元, 鈴木 衞, 小川 恭生, 他. ピッツバーグ睡眠質問票日本版を用いた めまい患者における睡眠障害の検討. Equilibrium Res Vol. 73(6)502~511. 2014.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jser/73/6/73_502/_pdf

2) Alexander Winkler et al. Effect of Placebo Conditions on Polysomnographic Parameters in Primary Insomnia: A Meta-Analysis. SLEEP, Vol.38, No.6, 2015.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4434559/

 

日本人の睡眠障害とその評価方法

私たちの所属する 反応点治療研究会 では、毎月勉強会があります。
いろんな先生の持ち回りで症例報告や研究発表を行います。
私(院長)の担当は、8月でした。

 

毎年、何をテーマに発表するか悩みますが、今年は「睡眠」にしました。
患者さんの訴えとしても多く、日本人の7割が睡眠に満足していないという報告もあります。
OECD加盟33か国で日本の睡眠時間が断トツのワースト1位であることはご存じの方も多いと思います。
その睡眠障害による経済損失は15兆円(GDP比で約3%)にものぼる「不眠大国」として、世界でも認識されています。1)

また、睡眠障害は様々な疾病につながることも指摘されています。
うつ病などの精神的疾患から、糖尿病、高血圧などの生活習慣病のリスク要因になることも言われています。2) 

その睡眠障害は認識しにくいものですが、最近の国内の研究では、熱帯夜による睡眠障害が、熱中症の健康被害に匹敵するという報告もありました。3)

 

そんな睡眠障害に対する、鍼灸治療の研究も数多くありますが、その評価は主観的な指標であるものがほとんどです。
今年の全日本鍼灸学会の一般演題でも、3題程見かけましたが、その評価方法も被験者自身が眠りを評価する「ピッツバーグ睡眠評価票」でした。

 

客観的な指標としては、医療機関で脳波を調べる検査がありますが、普段の睡眠状態とは大きくかけ離れてしまうことも指摘されています。
自宅で簡単に脳波を調べるサービスもありますが、それなりに費用もするので、個人で継続して試すにはハードルが高いものです。4)

 

そんな背景に対して、現在、個人で睡眠状態を測定できるウェアラブル装置、いわゆるスマートウォッチなどが登場しています。
ウェアラブル端末は若年層に受け入れやすく、睡眠習慣への関心を高めるツールとして有効であるという報告もあります。5)

 

私も1年ほど前から装着していて、自分の感じる睡眠状態(主観)と、スマートウォッチが測定する睡眠状態(客観)は、一致しているようにも感じます。
そして実際、その測定された睡眠状態を見て、良い睡眠を取るように心掛けることもありました。

 

これらを踏まえて、今回、ウェアラブル装置を用いた睡眠評価の妥当性を検討するとともに、私たちの反応点治療が、睡眠状態にどのように影響を及ぼすのかを調べてみました。

 
(続く)

 

1) よく眠る会社が勝つ 睡眠はもう個人だけの問題ではない
https://forbesjapan.com/articles/detail/51406

2) 駒田陽子, 井上雄一. 睡眠障害の社会生活に及ぼす影響. 心身医学. 47: 785-791. 2007.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/47/9/47_KJ00004675970/_pdf

3) Tomohiko Ihara, et al. Lossofdisability-adjustedlifeyearsduetosleepdisturbancecausedbyclimate change. Sleep and Biological Rhythms volume 21, pages69–84. 2023.
https://link.springer.com/article/10.1007/s41105-022-00419-z

4) 株式会社S’UIMIN 睡眠計測サービス「InSomnograf(インソムノグラフ)」
https://www.suimin.co.jp/

5) 葦原摩耶子, 飯田葉月. ウェアラブル端末を用いた睡眠習慣変容プログラムの試み. ジュニアスポーツ教育学科紀要. 6: 1-8. 2018.
https://kobe-shinwa.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=2667&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1

 

ピロリ菌の除菌治療

日本人に最も多い死因の「悪性腫瘍」(がん)。
その中にも、ある程度、予防できるものがあります。
いわゆる感染症で、その原因ウイルスが判明しているものです。

子宮頸がん ー ヒトパピローマウイルス(HPV)
肝臓がん ー 肝炎ウイルス
胃がん ー ピロリ菌

ワクチンで防げるもの、感染を防ぐことが出来るもの、除菌して予防できるものがあります。
その除菌できる一つが、ピロリ菌です。

前回、人間ドックで、私の胃にはピロリ菌が存在することが判明しました。
それが原因かもしれない?、鉄欠乏性貧血もありました。
ちょうど授業も無く、お盆休みも重なり、治療期間に最適だったので、すぐに消化器内科を受診しました。
診察の結果、痔、貧血、そしてピロリ菌除菌を、同時にしていくことになりました。

 

ボノサップパック

 

ピロリ菌治療に5錠、貧血に2錠、痔に2錠、計9錠も1回で服用することに。
過去にこれほどの量の薬を飲んだことはなかったです。
食後に薬を飲むのが苦痛になり、患者さんの気持ちも察します。

ピロリ菌の除菌治療は、何人かの患者さんからその大変さを聞いていました。
菌を殺すためには、抗生物質を服用します。
その効きを良くするため、胃酸の分泌も抑えます。
そしてピロリ菌だけが駆除されれば良いですが、良い菌も犠牲になるのでしょう。
腸の環境や動きが乱されます。

私も薬の飲み始めは、副作用がしんどかったです。
お腹がずっと張って、腰痛、腹痛にもなるし、食欲も減りました。
仕事中も、お腹がゴロゴロ鳴っていました。
ずっと住み着いていたピロリ菌が、悲鳴をあげて必死に抵抗しているようでした…

振り返ってみると、ガスが溜まって腹壁を緊張させるのが、苦しかったように感じます。
こまめにガス(おなら)を出せると良いのかもしれません。
(と気づいたのは3日目くらいでした…)
あとは、腹筋を緩める鍼灸治療もお勧めです。
 

そんなピロリ菌除菌薬の服用期間は、5日間。
この薬による除菌成功率は、8~9割くらいに達します。
つまり、1~2割は除菌できず、また改めての治療になるようです…

 

治療の結果は、服薬終了後、1か月以上経過してから再検査です。
除菌されていることを心から願います。
鍼灸で出来るケアも続けます。

 

9月以降、経過はまたご報告します!

 

(院)

 

貧血の原因は?

前回、人間ドックの結果待ちの時に、貧血が判明しました。
1か月後に送られてきたその人間ドックの結果を見てみると…

 

まず、献血の1週間前の採血だったので、やはり貧血でした。
そして献血時には不明だった、その原因も鉄欠乏性貧血だろうと。
血清鉄(血液中の鉄分)がかなり低かったです。

 

ただ前回も書きましたが、決して、食生活が悪くて鉄分摂取不足だとは思えません。
独身の時より、格段に良くなっていると感じます。
では、その原因は?

 

貧血で考えなければいけないのは「どこかで出血が起こっていないか」です。
鉄剤の補給で貧血が改善されたとしても、出血があれば根本的な解決にはなりません。
自覚できる出血はその改善ですが、自覚できないものとしては、内臓、消化管からの出血を疑います。
私は、自覚できる痔核があるので、その原因は一つ上げられます。
ただ、それ程の出血ではなく、今回の便検査でも出血は認められず、他の消化管からの出血の可能性も低くなります。
その原因として何があげられるでしょうか?

 

実は、今回の人間ドックの目的の一つに、ピロリ菌(H. pylori)の検査がありました。
私の母は胃がんで亡くなっています。
現在、胃がん最大の原因は、ピロリ菌ということが分かっています。
ピロリ菌の感染は、衛生環境の悪い水や食事、そして親から子への口移しなどで感染すると考えられています。
私も、感染している可能性は高いと考えられます。
(ちなみに、ピロリ菌の主な感染時期は乳幼児期でそれ以後の感染は少ない。1)
 つまり、夫婦間、大人同士の感染は無いようです。
 幼少期が同じ環境であった兄弟姉妹に感染者がいると要注意です。)

 

今回のピロリ菌の検査結果は…
「要医療」でした。
今回血液検査でピロリ菌抗体を調べたところ、疑いようもない位、高値でした。

さらに胃バリウム検査の結果も、聞きなれない「粗大レリーフ」という言葉が…
普通より太いシワのことのようで「慢性炎症など胃の病気も考えられ、自覚症状があれば要検査」とのことですが、もはや自覚症状はあてになりません…

 

そして、このピロリ菌が、貧血の原因にもなるそうです。
鉄分の「摂取」不足でなければ、「吸収」不足です。
食物中の鉄が、効率よく吸収されるためには胃酸とアスコルビン酸(ビタミンC)が重要ですが、ピロリ菌感染した胃粘膜ではそれが少ないこと。
また、ピロリ菌の感染者では、胃粘膜でのラクトフェリンの量が増加しており、ラクトフェリン内の鉄を供給源として増殖するため鉄欠乏になりやすいこと。
などが挙げられます。
「いくつかのメタ解析では、ピロリ菌感染が鉄欠乏性貧血のリスクであること、鉄剤投与に加えて除菌治療をおこなうと有意に鉄欠乏性貧血が改善することが報告されている」と、日本ヘリコバクター学会の治療ガイドラインにも記載されています。1)

 

ピロリ菌感染の可能性も薄々気づいていながら、なぜ今まで検査しなかったのか?
なぜこの検査がもっと一般的でないのか?
人によってそのリスクは異なるので、その人にあった検診は必要なのでしょう。
(日本ヘリコバクター学会では、中学生以降の検査、除菌が推奨されています。1)

今や胃がんの予防に、ピロリ菌の除菌は強く推奨されています。
正しい知識や情報を得ることは必要です。
自覚症状が無ければ…と思っていても(私もそうでした)、それはあてになりません。
自覚症状が出たときは、もう手遅れのときもあるかもしれません。

 

悔やんでもしょうがないので、これから対策です。
早速、ピロリ菌の除菌治療を始めました。

 
(また続く)

 

1) H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2016改訂版
https://www.jshr.jp/medical/guideline/index.html#sup2016