しびれ・麻痺

痺れと麻痺、字は似て異なるものです。

ただ、どちらも広くはっきりしない居心地の悪さがあります。

痛みほどではありませんが、その気持ち悪さは嫌なものです。

しびれ、麻痺、どちらのつらさにも、鍼灸にできることがあります。

 

しびれの原因と鍼灸治療

しびれがどのように引き起こされているかははっきり解明されていません。血流障害や神経障害によるものだとよく言われています。血流を改善しても、しばらく残るしびれがあります。また、もし神経が障害されたとしたら、起こるのはマヒです。(運動神経なら運動麻痺、感覚神経なら感覚麻痺。)ただ、神経はクッションに包まれており、簡単に圧迫や障害を受けにくい構造をしています。

しかし、しびれに対して鍼灸治療は良いとされています。鍼によって改善されるものは、痛み同様、筋や皮下組織であり、そこに原因があると考えます。

しびれがみられるときは、筋や関節がこわばり、緊張した状態によくあります。その緊張は、皮膚をひっぱり、その部分に多数ある神経のアンテナを刺激することで、しびれと感じるようです。それは、皮下の結合組織が密集している口唇、指先、足先などで、しびれが多いことからも想像できます。

よって、しびれを感じさせる歪んだ皮下組織がどの筋肉によるものかを確認し、主にしびれ周辺の皮膚や筋肉をターゲットに施術を行ないます。

 

しびれや痛みの誤解

「ヘルニアがあるから、腰が痛い」
「神経が圧迫されて、しびれや痛みがひどい」

だから手術をしようか迷っていたり、あきらめていたり…

神経は、痛みなどを伝える電線のようなものです。それが途中で障害を受ければ、信号は途切れます。だから神経の障害で起こるのは、マヒでしょう。痛みやしびれを感じるのは、その電線の先にある、受容器(アンテナ)に、信号が入ったとき。その受容器が圧倒的に多く分布するのが、皮膚や筋膜です。そこに痛みやしびれの原因があると考えます。具体的には、炎症(キズ)であったり、筋肉の緊張(コリ)であったり。だから、皮膚や筋肉をターゲットに施術を行います。

さらにその皮膚や筋膜と神経でつながる内臓へアプローチすれば、しびれの根本対策が行なえます。

 

麻痺に対しての鍼灸治療

しびれと混同されやすいのが、麻痺。しびれと麻痺は違います。しびれは感覚がありますが、麻痺は感覚がありません。麻痺は鍼治療できないかというと、そんなことはありません。

まず、健側(麻痺がない側)を労わることができます。動かない身体をかばうために、動く部分に負担がかかります。四肢麻痺の人は、首から上が、とてもしんどいようです。そのコリや痛みをとると、つらさも随分楽になります。

運動神経の麻痺による筋力低下にも対処できます。鍼灸の刺激で、直接筋力を上げることは無理でしょう。しかし、力が入らない原因に、痛みや筋緊張が関わっている場合は、改善することが可能です。その動作を制限しているブレーキを取り除くことで、可動域を上げ、動かすようになります。結果、筋肉を使うことになり、筋力も回復していきます。それにはリハビリも必要です。

そして、麻痺によって動かなくなった身体が、いつか動くようになる可能性もゼロではありません。iPS細胞の研究により神経の再生も期待されていますし、自己再生力によっても新たな神経ネットワークが構築されることもあります。それには「動かそう」という意思も大切のようです。全てのつらさは、麻痺のせいだけではありません。