アトピー性皮膚炎

からだに何が起こっているのかわからない不安、

夜眠れないのに昼間はとても眠い、

かゆい、疲れやすい。

皮膚の症状は不快感も強くとてもつらいものです。

見た目が変化するなどの要素が加わって精神的ダメージも多い疾患です。

肌が良くなると、おしゃれも生活も楽しくなります。

 

アトピーの原因は?

皮膚や粘膜が弱くなり、バリア力が低下して炎症が起こりやすくなっていると考えられます。

皮膚や粘膜が弱くなる原因の一つとして、天然保湿因子であるフィラグリンの発現が弱くなることもあります。また遺伝的に欠損していなくとも、免疫細胞の一つであるTh2優位の炎症反応が生じると、フィラグリンが減少することもわかっています。

1960年以降急増している疾患であること、大人になってからアトピーを患う方が増えていることを考えると、生まれつきや体質だけのものだけではありません。アレルギーが発端になる場合が多いようです。

 

アレルギーの原因は?

「花粉症」を筆頭に増えているアレルギーですが、その原因も治療法も確立はされていません。病院での一般的な対策も、症状を抑える対症療法が主になっています。

アレルギー症状とは、 接触した 食べた 吸い込んだ などの要因でからだに取り込まれた異物を排除するために起こる免疫反応です。多くのアレルギーは異物に含まれるタンパク質や糖タンパクなどのタンパク成分が引き金になります。私たちの体はタンパク質でできているために、自分以外の異種タンパクを排除する仕組みがあるためです。

アレルギー検査をしてアレルゲンを特定し、取り込まないようにする方法もありますが、免疫機構が活発になってくると、あらゆるものをアレルゲンとして感知するようになり、結果的に排除が必要なアレルゲンが増えてゆくのが現状のようです。

 

アレルゲンが増える原因

私たちの免疫機構には、前述のように自分以外のタンパク質を排除する仕組みがありますが、異物を取り込みながら共存する仕組みも備えています。腸では元々異物から栄養を吸収するようにできており、また、腸にいる免疫細胞(IgA抗体)が有益な細菌を腸の粘膜層に取り込む仕組みもあります。

その腸では日常多く入ってくる異物に対しては攻撃しないように制御する細胞(制御性T細胞(Tレグ))があります。この細胞が少ないと、アレルゲンとして感知される物質が増えます。幼い頃に家畜に触れる機会が多かった人に、アレルギーが少ないことも報告されています。現代人の清潔過ぎる環境が、アレルギーを増やしているとも言われています(衛生仮説)。

このように腸の免疫機構がアレルギー反応に大きく関わっています。睡眠不足やストレスで腸の正常な細胞の入れ替わりができなかったり、飽食で腸に消化の不十分なものが腸の粘膜を傷つけたりしても、腸内の免疫機構を乱し、炎症が増すことが考えられます。

腸が荒れると、アレルギーが増えることに加え、栄養の吸収や代謝が劣り、強い皮膚や粘膜が作られにくくなります。皮膚や粘膜のバリア力が不十分では、さらなる炎症も起こりやすくなります。腸内の環境が、腸内神経叢や脳神経系へも影響を与えます。

また、皮膚の炎症は、頭痛、のぼせ、冷え、不安、などの症状にもつながります。皮膚だけの問題にとどまらず、全身の不調へとつながります。

 

SORA鍼灸院の鍼灸治療

腸の粘膜と皮膚の強化に注目しています。

  1. 内臓の機能を高めて丈夫な粘膜をつくり、免疫機構を落ち着かせる
  2. 全身性の不調(のぼせ、冷え、不安など)を落ち着かせる
  3. 肝臓の機能を高めて薬の代謝を助ける
  4. 湿疹のある患部への施術で皮膚の修復を助ける

1→ 反応のある腸のツボへ施術します。皮膚へダメージの少ない優しい鍼灸刺激の積み重ねが、腸の粘膜の強化につながります。腸内細菌叢が、免疫に大きく関与していることもわかってきました。前述の免疫を抑制する制御性T細胞(Treg cell)が大腸内に多数存在していることから、腸内環境を整えることが、大事な要素と考えています。小腸も、人体最大の免疫器官であることから、免疫の乱れであるアレルギー対策に欠かせません。

2→ 体には自分で意識せずに調整される自律神経機能が備わっています。自律神経は、全身の皮膚、血管、臓器とつながり、そこにある感覚受容器からの情報をもとに、呼吸や血圧、消化液分泌、温度調節、腸管の運動の調整などを行なっています。アトピーはその皮膚や内臓粘膜に炎症を起こすことから、感覚受容器からの情報が乱れ、全身性の不調へとつながります。結果、のぼせ、冷え、不眠、不安などといった症状も増えます。それらの症状を増幅する原因に対して、一つ一つ対応していきます。

3→ 肝臓は体に取り込まれたものの解毒・代謝を担っており、免疫機構に大きく関わります。全身性の疾患のため、腸粘膜にも炎症があることを考えると、食べ物の消化が不十分になり、肝臓での食物の代謝、解毒の負担も増しています。炎症物質の処理や、痒みに関与するヒスタミン分解酵素の生成にも関わっています。薬を使用している場合には、薬の代謝の負担もあります。また、新しい皮膚や粘膜の基となるタンパク質の合成、皮膚粘膜の保持に関与するビタミンAを貯蔵する働きもあり「肝臓」反応点への施術は欠かせません。

4→ 湿疹は皮膚の血液・リンパ液の循環が悪い場所に現われます。肘、膝、指、顔まわりといった関節まわりや、皮下にゆとりの少ない部位に多く見られます。背中の湿疹では、湿疹の下に筋肉のこりが見られます。このように、湿疹のある部位は他より循環の悪い状態にあるので、皮膚や皮下の筋肉を緩めて環境を良くし、炎症を鎮めるのを助けます。循環が良くなれば、健康で丈夫な皮膚が作られるようになります。

 

痒みの対策

アトピーの痒み(かゆみ)が抑えられることは、大変重要です。「かゆみ」は「掻く」という動作を生み、その結果として「皮膚症状の悪化」を招き、それがまたさらに「かゆみ」を引き起こすという、負のスパイラルへと導きます。それをいかに断ち切るかもポイントです。その対策の一つとして、鍼灸やローラー鍼が挙げられます。その物理的刺激が、アトピー特有の痒みに対しても有効です。

2018年改訂のアトピー性皮膚炎の治療ガイドラインにも、経口の抗ヒスタミン薬については「効果は不確定で、エビデンスはない」とされています。 抗ヒスタミン薬内服単独での治療は推奨されず、痒みへの有効性を患者ごとに評価することが求められています。つまり、ヒスタミンが関与しない痒みがあるということです。痒みについては全て解明されているわけではありませんが、痒みの伝導路として、ヒスタミン誘導性C線維(化学受容器)と、ハッショウマメ誘導性C線維(熱機械刺激受容器)が知られています。「痛み」と同様に、鍼灸に得意な「痒み」があると考えます。

「100回掻いていたものを、80回に減らすだけでも皮膚症状は改善する」とも言われています。痒みを抑えることで、皮膚症状も落ち着かせることができます。

 

炎症を燃え上がらせない

最近の研究で、食べたり吸い込んだりして「腸」から取り込まれた異物に対しては過剰な免疫反応が抑えられるのに対し「皮膚にある傷」や「傷ついた粘膜」から取り込まれた異物に対しては免疫が過剰に働いてしまうことがわかってきました。

皮膚に傷があるとその部分に攻撃細胞が集まり、さらなる異物を捉えて攻撃します。あらゆるものを異物として感知し炎症は広がります。からだの消耗を防ぎ、余分なアレルギー反応を起こさないために、まず皮膚の炎症を抑えることも大切です。軽い症状のうちに早めに対策することをお勧めします。鍼灸は皮膚や粘膜を作る内臓の働きを助けます。また、炎症部の循環を良くし皮膚の修復を早めます。

全身の炎症や強い炎症のある場合は、皮膚からの異物の取り込みが増えるので、炎症が増え、消耗が激しくなり、内臓の機能も損ねます。そのため、ステロイドやプロトピックといった外用薬で皮膚の炎症を抑えることも必要だと考えています。炎症をある程度鎮め、はり、お灸、ローラー針で内臓の機能を高めることができれば、より速い効果が期待できます。内臓の機能が回復してくると免疫機構が落ち着き、薬の量も減っていきます。循環や代謝を促すので、副作用や薬の依存を防ぐ効果も期待できます。

鍼灸は体にかかっている負担を取りながら、治る力を引き出すものです。状態を見ながら症状の改善に取り組みます。

 

ご家庭でできるセルフケア

症状の改善のために、当院ではご自宅でできるセルフケアも提案しています。毎日休みなく働くからだのために、刺激を適切な反応点に毎日プラスすることがとても有効です。手軽にできるお灸(せんねん灸)や、刺さない鍼(ローラー鍼)などをご使用いただきます。前述の痒み対策としても重宝します。

アトピー性皮膚炎は、夜ひどくなるかゆみのために眠れなかったり、食べ物や環境の制限も出てきます。何を食べればよいか、何に注意したらよいか、情報も多く、良いと分からなくても選択を迫られる毎日です。

症状でお困りの本人だけでなく、家族も、心と体に負担の大きい生活を過ごしておられることと思います。当院でお勧めするセルフケアは、内臓の機能を高める、痒みを緩和するものです。患者さんを支えるご家族の方にもしていただけます。患者さんの症状改善に取り組むのはもちろんですが、患者さんを支えるご家族の理解と健康がとても必要だと考えています。”自分が負担をかけている”と感じている患者さんにも家族のためにもできるセルフケアです。

 

病気のために過ごさないで

体質改善には時間がかかる場合もあります。薬を使いたくない気持ちもわかります。でも、病気の為に今の大切な時間を無駄にして欲しくありません。症状をコントロールしつつ、今を楽しみつつできることを心がけていきましょう。