食物アレルギーについて

アレルギー学会感想つづき

食物アレルギーについて

最新の治療は「どう食べさせるか」が基本になっていました。
口から取り込み、腸内で抗体が作られることで耐性ができるからです。

具体的には必要最小限の原因食物除去。食物経口負荷試験で原因食物の食べても症状が出ない量を確認し、食べられる量は積極的に食べる。
3歳未満では6カ月ごとに原因食物に反応しているIgE抗体検査、6カ月から1年ごとに経口負荷試験をして食べられる物、量を確認していく。
(6才以上ではIgE抗体検査、経口負荷試験は1年から3年毎)

必要最小限の食物除去とは
1.食べると症状が誘発される食物だけを除去する。”心配だから”、“念のため“といって必要以上に除去する食物を増やさない。
2.原因食物でも症状が誘発されない、食べられる範囲までは食べることができる。
食べられる範囲“の量を除去する必要はなく、むしろ食べられる範囲までは積極的に食べるように指示することが望ましい。
(食物アレルギー診療の手引き2014より)

学会では症状が出る量を食べてしまった場合でも、その1回の負荷で耐性ができることもあると言われていました。

 

食物アレルギーは 秋冬生まれ、離乳食開始の遅れ、家族歴、環境アレルゲンの有無がハイリスクになるといわれます。

最近増えているのは果物アレルギーで、花粉症が関係する可能性が高いとのことです。

花粉症があると、交差抗原性といって、アレルゲンそのものでなくても似ている構造のあるものに反応して症状がでてしまうので、
カバノキ科ハンノキ属(ハンノキ)、カバノキ属(シラカバ)は、バラ科植物のリンゴ・モモ・サクランボなど、
イネ科とブタクサは、ウリ科植物のメロン、スイカなど、
ヨモギは、せり科植物のセロリ、ニンジンなどを食べるとアレルギー症状が出るのだそうです。(口腔アレルギー)

舌下免疫療法などの花粉症の治療をすることで、耐性ができ、上記のアレルギーも治る可能性も示されました。

 

また、皮膚や粘膜のバリアを強化することで皮膚や粘膜直下にいる免疫細胞の応答が減り、症状が出にくくなるのだそうです。

鼻の粘膜は腸などの粘膜と違い皮膚に近い構造を持つため、潤いやバリアを保つことで症状を予防できる可能性が高いそうです。
花粉症でも皮膚バリアの強化がポイントになりそうです。

食物アレルギーのハイリスクである秋冬生まれは、日照時間や日光に当たる機会が減ってビタミンDが不足すると食物アレルギーになりやすいという説もありますが、皮膚粘膜の乾燥でバリアが壊れたことも疑えます。

※バリアの強化は粘膜へのワセリンの塗布、症状が出ている場合にはステロイド塗布
(鍼灸での対策は、鼻粘膜の循環を良くして潤いを保ったり、粘膜細胞のターンオーバーをスムーズにしたり、酸素や栄養が患部に届きやすくなるので粘膜の強化につながります。)

 

食物アレルギーは乳児期の発症では治りやすいとも言われていました。
乳児期は皮膚粘膜も薄く、免疫細胞の発達も途上なので、症状が出るのも当たり前なのかもしれません。

アトピーや喘息がある場合は、重篤な症状を防ぐために、まず湿疹の治療、喘息の治療をしてから、食物アレルギーの治療に入るそうです。

学会では湿疹の治療そのものが食物アレルギーを減らすという研究発表もありました。
湿疹部で多く作られるリンパ球の好塩基球が腸管粘膜にある肥満細胞を活性化して症状が出る可能性があるそうです。

皮膚や粘膜の症状は食物アレルギーを増やす。
やはり皮膚や粘膜から入るとアレルギーになり、口から入ると耐性ができる、というのが基本のようです。

 

 

腸内細菌について

先日のアレルギー学会では基礎医学の研究成果と、臨床での研究、傾向についてなど講演がありました。
印象に残ったことをいくつか紹介します。

まずは腸内細菌について。

 

 

腸内細菌の働きは大きく「栄養」と「感染予防」です。

まず「栄養」ですが、腸に食物が入ると腸内細菌が食べて酵素を出し、その酵素が食物を吸収できる形に分解し、身体の栄養として取り込めるのだそうです。

そして「感染予防」ですが、無菌マウスの実験では、腸内細菌を持たないマウスは自身の免疫細胞が作られず、無菌室を出ると感染症にかかり、すぐに死んでしまうのだそうです。
細菌を取り込むことで初めて体を守る機能を発達させている、ということです。

母親から生まれるときの赤ちゃんの腸は無菌状態です。
口から入る細菌を少しずつ取り込んで腸内に住ませます。
帝王切開で生まれた赤ちゃんが、将来アレルギーになりやすいというデータもあります。子宮口から出る時に受け取るはずだった膣の菌を取り込めなかったことが原因ではないかと言われ、帝王切開で生まれたばかりの赤ちゃんに膣の菌を付ける対策をされる先生もおられるそうです。

腸内には1000種類以上、数百兆個の細菌がいて、その重量は1.5キロから2キロ。
殆どが嫌気性といって、空気に触れると死んでしまう細菌です。
その弱い菌ですが、腸以外の粘膜や腸の粘膜上皮に付くと炎症を起こします。
その小さい炎症が上記の感染予防につながります。
また細菌による小さい炎症でスイッチが入り、粘膜のターンオーバーが起こる仕組みもあるそうです。(腸の粘膜上皮は皮膚とは違い、数日で全部入れ替わるほど速いスピードでターンオーバーが起こっています。)

ただ、潰瘍を起こすような大きな炎症は、やはり害があります。

腸には”粘液層”という分厚い無菌の層があり、それが細菌と腸粘膜を隔てて、感染を防いでいます。

さらに大腸の粘膜で感染を防ぐ仕組みが昨年見つかったそうです。

大腸の粘膜上皮の最表層には”Lypd8”という蛋白質が多数あり、それが細菌の鞭毛に取り付いて動きを止めることで感染を防いでいる、ということでした。

(国立研究開発法人 科学技術振興機構
共同発表:腸内細菌の大腸組織侵入を防ぐメカニズムを解明」)

 

腸の働きが落ち、粘液層が薄くなると、まず鞭毛(鞭毛が尾ひれの様に働き、よく動ける)を持つ種類の細菌が腸粘膜上皮にたどり着いて炎症が起こります。
粘液層を泳いでくる細菌だけを止める仕組みや、感染すると害のある細菌を殺さずに共存する仕組みに、驚きました。

 

最近はアレルギーの予防になる可能性がある細菌も見つかっています。
ただ、既にその細菌を持っていれば、それほど変化がないのだとか。
必要なのは細菌の多様性なのだそうです。
1つの菌が突出して多いより、バランスよく多くの菌がいることが、健康に繋がります。
毎日同じものを食べるのではなく、色んなものを食べることで、多様性が生まれるそうです。

ストレスも腸内細菌を変化させます。
病気に意識を集中させないことも、ストレスを減らして細菌のバランスを保つことになるのでしょう。

 

色々な細菌を大事に生かしている腸の仕組み、悪玉も善玉も本当に悪だけで善だけなのか、簡単には分からないということでしょうか。

子供が熱を出したり湿疹が出たりすると親としては不安になりますが、細菌を取り込んで、軽く病みながら育つのが自然なのかもしれないと感じました。

 

 

第66回日本アレルギー学会

先週16日、17日の2日間、第66回日本アレルギー学会学術大会に参加してきました。
東京国際フォーラムで開かれた学会のテーマは、
「紡ぎだす、アレルギー学の新たな半世紀 ~知りえたコト、解くべきコト~」。
アレルギー症状の発現に関わるIgE抗体発見から50年を過ぎ、次の半世紀に向けてのテーマとなっています。


(ロビーの様子)


(会場の中庭)

アレルギーは症状が多岐に渡るため、内科、小児科、耳鼻科、皮膚科、眼科、基礎医学、各分野が参加する横断的学会でした。

未だ謎の残る皮膚のターンオーバーの仕組み、腸粘膜のターンオーバーの仕組み、皮膚バリアについて、腸内細菌について、炎症を起こすときに働く免疫細胞の種類、働きについて。

また、臨床での症例、新しくなった食物アレルギーのガイドラインについて等、今それぞれの分野で研究されている最新の成果が活発に交換される場になっていました。


(ポスター発表会場)


(企業のブース)


(これから開かれる講演等)

一般向けの講義ではない為、なかなか難しい内容も多かったのですが、皮膚のターンオーバーの仕組みと、腸内細菌についての講演は特に面白く聞くことができました。

腸には多くの細菌(異物)を住ませることで初めて栄養を取り込む仕組みがあり、また、その細菌があることによって免疫細胞を発達させる仕組みがあり、悪玉、善玉の区別なく、多くの種類の菌を持つことが健康に繋がる話は改めて印象に残りました。
細菌をいかに住ませて、感染せずに腸粘膜を守るのか、その仕組みも面白く、ワクワクする内容でした。
ある種の細菌が多いと特定の病になりやすいという事もいくつか解っているようですが、細菌が1000種類以上、数百兆個単位であるといわれ、解析はまだこれからのようです。

腸内細菌バランスは食事、感染、加齢のほか、ストレスによっても変化するそうです。
鍼灸には身体にかかるストレス(負荷)そのものを取ったり、ストレスの感じ方を和らげる効果があります。
多くの種類の菌が気持ちよく住める環境づくりに、鍼灸にもできることがありそうです。

身体にはいろいろな仕組みがあって、今わかっている仕組みもほんの一部なのでしょう。
研究されている先生方が、まだ何かあるはず、という意識を持っておらるのが伝わりました。
何気なく過ごしていると病や不調の方が目立ちますが、私たちの身体はやはり驚くほど精緻で、素晴らしいのだと感じました。

充実した2日間を過ごしてきました。
新しい知識を患者さんにもお伝えしていこうと思います。
 
 

アレルギー市民公開講座にいってきました

日本アレルギー協会主催の市民公開講座に出かけてきました。

私(副院長)も所属している日本アレルギー協会は、1966年に石坂公成先生がIgE抗体を発見したのを機に1967年に発足しました。
IgE抗体が米国のアレルギー学会で発表された2月20日を「アレルギーの日」と制定し、1995年からその前後1週間 を「アレルギー週間」としてアレルギー疾患に対する一般の方々や医療従事者の理解と啓発活動を行っています。

神戸会場のテーマは
『治療について考えよう』

第一部
「花粉症・アレルギー性鼻炎の対策と治療」
都築健三先生(兵庫医科大学病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 准教授)

第二部
「アトピー性皮膚炎をしっかり治すために、正しく理解しよう」
福永淳先生(神戸大学医学部付属病院 皮膚科 講師)

という2つのプログラムでした。

第一部では、

鼻の仕組みや炎症の起こる機序の説明から始まり、対処療法、根治療法の種類と方法、セルフケアのアドバイスもありました。対処療法としていくつかの手術の様子を実際に見ることもできました。

配られた冊子によると、

・根治療法である減感作療法(皮下免疫療法)は症状の軽減、無症状が80%以上であるが、治療が年単位で頻回の通院が必要であること。

・新しい免疫療法である舌下免疫療法は皮下免疫療法より副作用が少なく、初回以外は自宅でできる手軽さはあるが、患者さん自身の理解がより必要になること。

・皮下免疫療法は季節の3か月前からの通院と皮下注射を年単位で行う必要があり、副作用の可能性もあるために注射後の観察も必要で、治療を完了できない方も多かったようです。それに比べて新しい舌下免疫療法は患者さんの負担が減るので多くの方が治療を完了できるようになるだろうといわれています。今後10年以内には、さらに負担が少なく、より安全な療法が受けられるように研究開発がされています。

第二部では、

・皮膚バリアが壊れると、異物によって炎症を起こす免疫細胞が増え、また、痒みを伝える神経そのものの成長が起こり、掻くことでさらなる炎症が起こること

・皮膚バリアを保つために保湿だけでなく保清も大切であること

・痒み、アレルギー反応は、いくつかの機序から起こり、一つの原因で起こるわけではないこと

・炎症を起こしている免疫担当のリンパ球は、薬(ステロイド・タクロリムス)でその働きを抑えているうちにアポトーシス(もともとプログラムされた細胞死)が起こり、炎症が治まること

・痒みやアレルギーを誘発する物質がいくつかわかってきて、それに対する薬の研究も進んでいること

・医師の説明がしっかりなされ、患者さんが理解し、患者さん自身が治療方針決定に参加する”アドヒアランス”が重要

など、わかりやすく聞くことができました。

花粉症とアレルギー性鼻炎では粘膜に付着させないこと、アトピー性皮膚炎は皮膚のバリア機能を保つことが大切です。
粘膜や皮膚の潤いを保ち、強化することによって症状が抑えられるというヒントがたくさんありました。

皮膚や粘膜の代謝を整えたり、皮膚や粘膜をつくる内臓の働きを高めることは鍼灸の得意分野です。
SORAの患者さんにもお伝えしていこうと思います。

患者さん本人が体の状態を知る機会が多いほど、不安も減り、治療に取り組みやすくなります。
関西での市民公開講座は2月26日で終了しましたが、日本アレルギー協会では一般の方への情報発信もしています。
興味のある方は是非のぞいてみて下さい。

日本アレルギー協会
http://www.jaanet.org/

↑ 配られた冊子。治療院に置いてあります。

 

 

乾燥と肌荒れ

乾燥で肌が荒れやすくなることは、経験的にご存知だと思います。では乾燥がどのように肌に悪さするのでしょう?

乾燥環境(約10%)にさらされると1~3日くらいで、皮膚はさまざまな刺激に対して敏感になるという実験結果があります。※1 目に見える変化はなくとも、わずかな刺激で、表皮の異常増殖が起こり、アレルギー反応も出やすくなる傾向を示します。湿度が通常(40~70%)や、高湿度の状態では、起こらないようです。さらに時間が経てば、皮膚のバリア機能も高くなり適応する能力を持っています。つまり、乾燥環境下にさらされることで、皮膚のバリア機能が「一時的に」低下します。湿度の変化が肌を悪化させる要因の一つのようです。※2

最近は加湿器も普及し、冬の部屋の中は高湿度に保たれています。ところが外はというと、都市化も進み、乾燥が進んでいます。隙間風のない建物の密閉化も、そのギャップに追い打ちをかけているようです。(夏は逆に、外は暑く高湿度、内はエアコンで低湿度になります。) 便利さや快適さが増すことで、その代償もきっとありますよね。

冬に限らず、この湿度変化による皮膚バリア機能の低下がポイントになってくるようです。肌が弱い方やアトピー性皮膚炎、アレルギー体質の方は参考にされてみて下さい。

※1
Regulation of the cutaneous allergic reaction by humidity

※2
「賢い皮膚」 傳田光洋

冬の肌荒れ対策

寒い日が続きますね。この辺りは雪が積もることはありませんが、少し北や山へ向かえば雪景色の所も。普段、雪を見ない私にとっては、少しテンションも上がります。

ところがこの冬の時期に、肌の調子が悪くなる方も少なくありません。特に、手先や顔など。肌が露出しているところも多いようです。この時期に悪くなる原因としては、「寒さ」と「乾燥」でしょうか。

寒いと、やはり血流が悪くなります。外界に面している部分からは直接熱が奪われますし、身体の中の深部体温を一定に保とうとする働きによっても、やはり末梢の血流が悪くなります。血流が悪くなれば、その周辺の細胞環境=皮膚も悪くなるのでしょう。また、運動不足や筋肉のコリなどによっても、血流は悪くなります。

乾燥は、身体のバリア力を低下させます。空気に触れている肌もそうですが、身体の中の粘膜も。この時期は、風邪やインフルエンザの流行を例に、鼻やノドの不調が顕著になります。その鼻やノドの不調が、同じ三叉神経支配の顔面部にトラブルを起こします。

つまり冬の肌荒れ対策としては、冷えや乾燥を防ぎ、頭部、手先足先の血流を良くすること。運動や鍼灸でこわばっている筋肉のコリをとることもひとつでしょうか。気になる部分とその原因部分にセルフケアも追加していけば、荒れたお肌もよみがえっていきます。