妊娠初期の鍼灸治療

「妊娠中は安定期に入るまで、鍼灸は受けてはいけない」

よく聞く話です。調べる限りそう言われることの発端は、鍼灸の古典にあるようです。有名な「三陰交」というツボは、「妊娠初期は堕胎(流産)させるツボ、安定期以降には安産のツボ」とされています。そんなことはあるのでしょうか?

胎児の染色体異常、人受精卵の免疫の脆弱性などから、「妊娠初期は流産する確率は高い」と今はわかっています。ところが、昔の治療は、経験則(自然観察)によるものです。妊婦さんを同じように鍼灸治療していても、初期には流産になりやすく、安定期以降は流産になりにくくなります。そういった経験から、同じツボであっても、「初期に治療すると流産に」、「安定期以降に治療すると安産に」となります。その前者の部分が取り上げられ、「妊娠初期は治療してはいけない」となったのでしょうか。

実際、妊婦さんの施術をしていても、三陰交のツボと呼ばれるあたりには反応点が見られます。それは、腓腹筋やヒラメ筋の反応点であって、妊婦さんに足のむくみやこむら返りが多いことからも、昔から治療点としたかったことも想像ができます。

最近の研究論文を調べてみても、妊娠初期の鍼灸治療が危険という所見は見つけられません。むしろ、それを否定する文献ばかりにあたります。※1

妊娠初期は、つわりや身体の変化などで、つらい時期でもあります。そういう時にこそ、何か対策をしてもらいたいでしょう。余計な心配をされることなく、安心して鍼灸治療を受けて頂きたいものです。

※1
The safety of obstetric acupuncture: forbidden points revisited
David John Carr
Acupunct Med 2015; 33 : 413-419 doi:10.1136/acupmed-2015-010936